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村上龍映画小説集 / 10月

昨日、久々に家に早く帰ったので、前日に買った半額のブリと、レンコンと大根丸々一本を使って料理をすることにした。

材料
半額のブリ  4切れ
大根 1本
レンコン 2つ

大根とかレンコンを適当に切って、みりんと料理酒と醤油をいい感じに入れて、グツグツと煮詰めて、水分が少なくなればブリ大根の完成。

大根たっぷり

調味料は量るものが無いのでいつも適当に入れているのだけれど、大体上手くいく。生姜焼きとか。
料理全般も始める前は厳密に作らないといけないものなのかなと思っていたけど(食戟のソーマを読んでいたので)、あんまりそういう訳でも無いらしい。

最近、「村上龍映画小説集」を読み返した。
以下はその短編の一つの中のラストシーン。とある女に消費し尽くされてボロボロになってしまった主人公(ヤザキ)が、別れた女(ヨウコ)の所へ赴くシーン。特にこの本の中で大好きなところ。

「じっとしていることが難しくて、要するに寂しかったわけだけどね、小説を読むようになったし、映画を観るようになったのよ、そこで遅ればせながら、ああ、映画ってこういう気分の時のためにあったんだなあって思ったの、『ワイルド・エンジェル』って映画、観た?」もちろん、と私は言った。「わたしは『イージー・ライダー』よりも好きだけどね、ラストシーンを憶えてる?」もちろん、と答えて、ようやく私はヨウコが何を言おうとしているかがわかった。『ワイルド・エンジェル』の最後で、ヘルス・エンジェルスのリーダーを演じるピーター・フォンダが死んだ仲間の埋葬をしている。そこへ響官がやって来る。情婦のナンシー・シナトラが、逃げよう、と言うが、ピーター・フォンダは死んだ仲間に土をかけながら、呟く。どこへだ?行くところなんかないじゃないか。
「わたしはあのラストシーンが好きなの、百本近く映画を観たけど一番気に入っているラストシーンじゃないかな、いい?本当は誰だって行くところなんかどこにもないわけじゃないの、そんなことを考えずにすむような何かをあんたは捜さなきゃいけないわけでしょ?
行くところがあるっていったって、たいていの人は、それは用事があるだけなのよ、そこへ行けと誰かに命令されてるのよ、兵士から大統領までそれは同じだと思うわ、あんたのことを、逢わなくなってから衝底的に考えたの、あんたに才能があるかどうかなんて知ったこっちゃないけど、あんたは用事のない生き方をする人だな、と思ったのよ、それをやってれば、どこにも行かなくて済むっていうものを見つけなさい、それができなかったら、あんたは結局、行きたくもないところへ行かなくてはいけない羽目になるわけよ」わかったよ、と私は言って、ベッドから起き上がった。
「福生に戻るよ」
ベットから降りてそう言うと、ヨウコはうなずいた。

『村上龍映画小説集』より

この小説は村上龍が彼が故郷の佐世保を出て、18歳で上京してから2年の浪人、大学入学、小説家としてデビューするまでの期間を描いた自伝の短編集になっている。『69 sixty nine』の続編的な立ち位置の作品。超絶に面白いのでみんな読んで!!
2年の浪人期間に主に焦点が当てられているのだけれど、彼は大学受験に向けての勉強は全くしていない。セックスとドラッグ漬けの生活を送っている。

「それをやってれば、どこにも行かなくて済むっていうものを見つけなさい、それができなかったら、あんたは結局、行きたくもないところへ行かなくてはいけない羽目になるわけよ」

村上龍のその後の生き方を考えてみると、ある目的に対して一直線に向かっているような印象は受けない。用事があってそれをこなすというよりは、もっとフラフラと、用事の無い生き方をしているように見える。

キューバ音楽のCDをリリースする「MURAKAMI‘Sレーベル」を立ち上げたり、映画を何本か撮っていたり、『日経スペシャル カンブリア宮殿』の司会を務めていたり。

村上龍の小説を読んでいても「用事の無い生き方」を思うことは多い。
限りなく透明に近いブルーの後に、コインロッカーベイビーズで作風がガラッと変わり、そして、KYOKOでもまたガラッと変わっている。
しかし、どんなに作風や描写の仕方やストーリーが変わっても村上龍は村上龍なのだ。最高級に面白い。「どんな映画を撮っても面白い最高のB級映画監督のような小説家」と誰かが村上龍の事を呼んでいたが(おそらく1997年6月のユリイカ村上龍総特集)、まさしくそう。

何故今村上龍を読み返したかというと、今年の12月のファッションショーに出す服のデザインが煮詰まっていて、本当に何にも思い浮かばなくて、自分って何かを作ることに本当に向いていないんだなあと憂鬱な気持ちになっていて、逃げたいという一心から。そもそも何から始めればいいのかが分からない。

そして、何回か「自分に向いていないし辞めよう」とか「もう飛んじゃおう」とか思ったんだけど、何だかんだでやめられずにいる。
実際に友達で途中で辞めちゃったやつがいて、そいつに「自分の分までよろしくな」みたいなマジで無責任なこと言われてしまったんですよ。辞められないじゃんそんなの。
あとは一緒に学んでる人達がすごく面白い奴らだったりして、自分が煮詰まっている服作り以外のことは最高。
常に辞めたいとは考えているのだけれど恐らくショーに出す服を作るまでは辞めることはないと思う。
あーめんどくさ!!(IWGPのマコトみたいな気持ち)


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