しごと②入社前に地獄の研修を受けて目つきが悪くなる

後に最悪の就職氷河期と呼ばれる時期にそれがどんな企業だったとしても就職できたというのは実は幸運だったと思うこともあります。大学の同級生は結局内定が1つも取れずに就職浪人を選択する人もいました。卒業後にアルバイトで生計を立てたり、大学を留年する人もいました。

私の入社した企業は消費者金融の会社で当時は絶好調の業界であったため大量採用していたという実態はあるものの、東証一部上場企業でしたし、会社説明会や採用面接でも悪い印象を受けることはありませんでした。

そして、大学を無事卒業して4月の入社を控えて、3月の終わりに入社前研修が行われたのです。

研修は3泊4日だったと思いますが、千葉県の船橋あたりの宿泊付きの研修施設で行われました。人数が多いからなのか分かりませんが、最初に新入社員の男性のみが、後に女性のみに分かれて行われたのでした。4月1日の入社式を挟んで前3日が男性社員研修、後ろ3日が女性社員研修というスケジュールだった記憶があります。

この研修は現在ではほとんど行われなくなったであろうスパルタ形式でした。金融知識の座学はそこそこに行われましたが、ほとんどの時間は新入社員の意識改革に充てられたのでした。

具体的には、①とにかく大きな声を出させる。②何度でもやり直しさせられる。③講師から怒鳴られる。④連帯責任を取らされる。⑤人格否定のぎりぎりまで詰められる。といったことが行われたのです。

今の職業環境観点からすると異常と思うようなことでしたが、当時はパワハラなどという言葉もなく、昨日まで学生だった身にとっては社会人とはこういうものなんだろうとなぜか受け入れてしまっていた(受け入れざるを得なかった)のでした。もちろん研修中に辞めてしまう人も何人かいましたが、ほとんどの新入社員は3日もそのような環境にいると催眠状態というか洗脳状態になってしまって、全員が目のギラついたソルジャーに変わっていったのです。

そして、研修の最終日にはこれから研修を控えた女性社員と合流して入社式が行われました。3日間の地獄の研修を受けてスパルタの戦士になった男性新入社員達は、まず目つきが違いますし、声の大きさも違います。そんな男性新入社員を見た女性新入社員達は相当怖かったということを後の支店配属後に聞かされるのでした。

そして、3月の入社前研修を何とか乗り切り、ソルジャーに生まれ変わった私は4月に入り、配属先である大宮支店で仕事を始めるのでした。

そこではこれまでに経験したことのない、人間ゆえの生々しい世界があったのです。

つづく


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