ミアの後日記:1冊目

普通の終わり

えーと、25XX年辺りかな。
水色の蛍光色に光る巨大隕石が海に落ちた。
それから1ヶ月後かな。
その異物によって環境が急激に変異したんだ。
まさに天変地異で、特に海の変化が大きかった。

通常ありえないレベルの海面上昇で、放っておけば全ての大陸を飲み込む程だった。
元々存在する浮島だけは残り続けるはずだけどね。

そのうち地上の生物は滅ぶだろうと人々は不安になったと思う。
ぼくはそんな中で「方舟」の物語が脳裏を過ったんだ。
それはそれは随分と古いお話だけど、方舟そのものは実際に造られた記録がある。

ぼくはサイラス君とラナさん、アランさんと、仲間を集めて、アイデアを実現するために方舟の設計をした。
こんな事態だからか。ぼくらは物語のようにバカにはされず、寧ろ期待された。

設計している時に考えた。
今後も海面は引くことは無いだろうし、大陸は浸食される。
その舟にコロニーとしての役割を持たせることにしたんだ。

そして、ぼくらは数年かけて設計図を完成させ、人々は方舟を建造し始めた。
それで、一旦解散して今後を見届けようと思ったら…急に天気が悪くなってね。

まるで意思があるように海が急に荒れて、ぼくが乗っていた船が難破したんだ。
それでぼくは溺死した。

終わったその後へ

奇妙な事に、ぼくは海の中で目覚めたんだ。
思うように体が動かせなくて…数十分程苦戦して動けるようになった。
腕がイカのようにみえるけど、本物のイカとは全く違う。
デフォルメされた感じだった。 

なぜこうも妙なのか、硝子の欠片があったからそれを見たんだ。

思った通りだった。
ぼくがずっと大事に持っていた人形のような姿だった。

ぼくの周辺には傷んだ服や鞄が散乱していた。
恐らくぼくの持ち物だったものだ。
傷んでいるどころか少し朽ちていたから、相当な年月が経っていると思ったよ。

鞄を引き摺りながら路頭に迷っていた時に、タブサクラゲがこちらに来た。
顔のような組織と、知的な仕草。
ぼくがよく可愛がっていた突然変異体と同一の特徴だった。
名前はハイゼね。

あ、遂に人間の他の生物とおしゃべり出来るのかもしれない!と内心歓喜したよ。
ファーストコンタクトだ!

それでね、見た目相応に子供っぽいふりでもしようかなと思ったんだけど…
彼はぼくを知っているような素振りをしたから…
念の為にバッグからメモやペンを取り出して渡してから
「君って…もしかしてハイゼ?」って聞いたんだ。

彼は文章での対話も可能なくらいに知能が高いからね。

そうしたら文章を書き始め、答えが返ってきた。
『自分が認識している名称は…ハイゼで間違いない。
その名で呼ぶということは、姿は違えどミア本人だな?』
とちゃんとぼくを認識していた。

そして彼はぼくをまじまじと見て?から『エスコートは必要か?』と一言。

もちろん必要だと応えた。
生き物とはまた違う出自だし、なにより未知の世界だからね!
何十年経ったんだろう、かろうじて原型を留めている廃墟群があったから、一時的にそこで過ごすことにした。

それでね、つい習慣で日記をつけようと思ったら、いつの間にか鞄に入っていたんだ。
見た目はいつもつけていた日記帳だけど奇妙だった。
どこが妙なのかと言うと、
再生紙なはずのに水中で傷まず、ペンでしっかり書ける。
防水にしても限界があるはずだよ。
これ書いてて思ったけど、ハイゼに渡したペンもメモも妙だ。

あと新品のように綺麗なんだ。
誰がこんな人気の無い海底にある鞄に新品の日記を仕込もうと思うんだろう。
それか魔法でもなければ…いや、まさかね。

なんというか、世界の常識が少し変わっている気がした。
新たなスタートだし、探求しようかな。