【俺は人間に聞いてみたい。】9
イメチェン
なぁ、ネネ。
俺な、ネネに聞きたいことがあるねん。
ネネ、髪切った?
「おっ、わかる?」
やっぱりか。なんかそんな気がしてん。
「イメチェンしてみたんやけど変かな?」
うーん、変ではないよ。
「カッコよくなった?」
うーん、カッコいいとかじゃないかな。
「……じゃあ、なんなん」
カッコいい寄りの変かな。
「……変寄りのカッコいいならだいぶ救われたんやけど」
なぁなぁ、それよりなぁ〜
「……何を言いたいかわかってる」
俺も髪の毛切ってみたいねん。
髪型変えてみたい。
「そう言うと思ってた。ネネに髪を切ったか聞いてきた瞬間に本題がそれやと気付いてた」
それやったら話が早いわ。
俺の髪の毛を切って欲しいねん。
髪型変えてみたい。
「……」
はいはい、わかってます。
切ってもらってる時に暴れたりしません。
じっとしてます。
「……」
約束します。
「そういうことじゃなくて。勝手に話を進めんといてくれるかな」
えっ、アカンの?
またアカンの?
「か、髪?髪の毛?っていうんかな。その……ネズミに髪の毛とか髪型とかそういう概念が……」
ガイネン?
「どう言えばいいんやろ……その、髪型っていうより、毛皮って言うたらいいんかな」
そしたら毛皮の型を変えて下さい。
「なんか恐ろしいことをつぶらな瞳で言わんといて」
つぶら?ひとみ?ガイネン?
さっきから難しい言葉ばっかり使うやん。
あー、もう、とーにーかーくー切って欲しい!
俺もイメチェンしたいねん!
「無理なこと言わんといてくれるかな……ネズミのイメチェンって。どないしたらいいんや。危ないし絶対にアカン」
ネネはアレしたらアカン。
コレしたらアカン。
何でもアカンアカンアカンアカンアカン。
アカンしか言えへんやん。
俺は今日こそ成し遂げる。
やりたいと思ったことを成し遂げる。
髪の毛切ってもらうまで俺は回し車で走らんから。運動不足でぶくぶくになっても知らんから。
「いや、その、これから冬やから毛皮が無いと風邪ひくし」
先週、俺のお部屋にぬくぬくヒーターさんつけてくれたやん。だから大丈夫やねん。
「そしたら毛皮をいっぱいナデナデしてあげるからそれでよくない?フサフサが少し収まるかも……」
嫌や。
無理。
イメチェンしたい。
「ネネも嫌や。無理。そんなこと出来ひん」
ネネはいっつも自分ばっかり。
買い物行ってぇー
チョコバー食べてぇー
スマホ触ってぇー
髪の毛切ってぇー
そんで俺にはアカンアカンアカンアカン。
なんなんそれ。
ネズミ辞めたくなるわ。
「そこまで……」
ほんま、俺だってカッコよくなりたいねん。
それって悪いことですか?
ねぇ、悪いことですか?
「うわ、めっちゃ怒ってる。何でそんなにイメチェンだのカッコよくなりたいだの……ーーーあ!……あぁ〜なるほど、そういうことねぇ」
そういうことってどういうこと?
「いや、別にこっちの話。……ん!?あれ?あれ?これ、なんやろ……」
どうしたん?
「メールかな。ーーやっぱりメールや!こんな時に突然メールがきたっぽい。一体誰やろ、こんな時に」
誰からなん?
「あー、これはキャミからのメールやな」
キャミからメール!?
「うん。えっと……『キャミは飾らない人が大好きです』って書いてある。なんやろ、コレどういうことやろ。何を言うてるんやろ」
……飾らないってどういう意味?
「カッコつけたりせずにそのまんまってことかな」
ふぅん。そうなんや。
「そうらしいね」
……あー、俺もうイメチェン止めとくわ。
なんか気分が変わった。
俺はありのままの自分でいたい気分になってきてた。
「おー。なんかめっちゃカッコいいやん。そんなん言える人めっちゃカッコいいと思う」
そう?じゃあ俺が今言うたやつ、勝手にキャミに言うても別に怒らへんで。
「じゃあ、今度キャミにこっそり言うとこかな」
キャミはどう思うかな?
「そら、カッコいいって思うでしょ」
そうやんな。俺、全然飾ってないしな。
「そうやで。飾らんのが一番やで」
なぁ、ネネ。
「ん?」
あの、その、あの……キャミからのメール見せて欲しいなぁ。
ちょっと見てみたいねん。
「ごごごごごごごめん、すすすすすすすぐ消去してしまったわ」
えー?もぉ〜これからはキャミからのメールは絶対に残しといてな。
「気をつけます」
飾らないが一番かぁ……うん!俺はこれから言葉も飾らずに生きていくわ。
「うん?言葉も?」
あのな、ネネ。
「ん?」
その髪型な、めっちゃ変やで。
「……うん。そっか」
ちなみに前の髪型も変やったで。
「……うん。そっか」
ネネも飾らずに生きていきや。
「……うん。そっか」
質問しがちなネズミとのひととき
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