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【俺は人間に聞いてみたい。】5

いじわる


 なぁ、ネネ。
 俺な、ネネに聞きたいことがあるねん。

「なに?」

 ネネは優しい人間?

「そう在りたいと思ってはいるけど」

 ふぅん。そうなんや。
 そういうのって、なんかええなぁ。
 がんばったらええんちゃう。

「そうさせてもらいます」

 ……ネネ、疲れてない?

「まぁ、ほどよく疲れてるかな」

 無理せんときや。

「ありがと」

 あーネネ。
 ……忙しくなかったらお野菜ください。

「……ええよ」

 ネネ。
 あの、セロリさんください。

「ええよ」

 なぁ、ネネ?
 ニンジンさんもください。

「ええよ」

 キャベツさんもください。

「ええよ」

 ネネ。あのね、ご飯の時間じゃないけどペレットください。一粒でいいからください。

「……ほんまはあかんけど……今回はええよ。でも夜ご飯の量は減らすから」

 はい、ありがとうございます。
 そしたらネネ。もう一回セロリさんください。

「……ええけど」

 キャベツさんください。

「……ええよ」

 チョコバーください。

「……」

 セロリさんください。

「ええよ」

 チョコバーください。

「…………」

 チョコバーをください。

「……全然どさくさに紛れられてないから」

 えっ、アカンの?

「アカンわな。どう考えても」

 それって全然優しくないやん。
 ネネは優しくなりたいんやろ?

「優しく在りたいと優しくなりたいは別物」

 俺はネズミやから何を言うてるのかわからへん。やっぱり人間とはわかりあえへんのや。

「めっちゃ投げやりやん」

 そら、チョコバー食べられへんかったんやもん。イライラもするわ。

「練りに練った作戦やったんやね」

 ……なぁ、ネネ。
 俺はいつになったらチョコバー食べれるん?
 俺はいつになったらチョコバー食べていいん?
 俺もな、食べてみたいねん。

「ごめんやけど、チョコバーを食べさせてあげることはできん。絶対に」

 なんでそんな意地悪言うん?
 どうせネネは俺のこと嫌いなんやろ。

「ちゃうやん。君がチョコバーを食べると体に悪いからやねん。意地悪で言うてるんじゃないねん」

 俺がチョコバー食べたら死ぬん?

「死ぬかどうかわからんけど、体には良くないねん」

 でもネネはいつも食べてるやんか。
 こっそり食べてるやんか。

「……やっぱり。なんか視線感じるから食べにくいと思っててん」

 なぁ、俺は絶対にあかんの?

「あかんね。君が死んじゃうと悲しいから」

 ……でも、俺がチョコバー食べたいのに食べられへんのは悲しくないん?

「ネネはチョコバー以外の部分で君に幸せを感じてもらえてると思ってる」

 だけどな、チョコバー食べたら俺めっちゃ幸せになれるかも。なんかもっと幸せになる気がするねん。

「健康でいようって約束したやんか。死んで欲しくないのは当たり前やけど、健康で少しでも長く一緒にいたいから食べて欲しくない」

 ひとくちだけでもあかん?
 ちょっとだけ、なんか、カリっていうくらいちょびっとだけでいいから。

「あかん。優しさと甘やかしも別物」

 ……わかったわ。
 ネネがそこまで言うならそうなんやと思う。

「ネネに意地悪を言わせる君も意地悪やと思う」

 うん。

「あのね。優しいとか意地悪とかじゃなくて、ダメなもんはダメで納得してもらわなあかん時もあるねん」

 うん。

「でも、ネネもこれからはチョコバーの食べ方には気をつけるようにするから。そこはごめん」

 そやな、そうしてもらえたら助かるわ。
 あと匂いもな。
 これがまたええ匂いするねん。

「配慮します」

 なぁ、ネネ。

「なに?」

 セロリさん、もう一回だけください。

「ええけど、夜ご飯は無しや」


質問しがちなネズミとのひととき

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