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「無意識ー空の章ー」#12(最終話) 未来の歌

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 夏井さんの癖は「余裕を感じると謙遜する」の他にもうひとつ。
「動揺すると必要以上に敬語になる」というのがある。

以下は、歌詞の続きを書いてもらおうと夏井さんがハリネズミの家に電話をかけた時の受け答え。
(ちなみに詞を書いたのがハリネズミと分かった時点で夏井さんが「なら、僕が電話番号知ってる」とかけてくれたので、お店のシステムは覗かずに済んだ)。


「…はい。あーそうなんですか。大変なんですね。いや~知らなかったとは言え失礼しました。こんな夜遅くにどうでもいいことで…。あ、いえそんな。忘れてください」


横で聞いてて、完全に親が電話に出てきたのかと思った。
(後で聞いたら、ちゃんと本人と話してた)

ハリネズミに唯一会ったことのない北里泉は

「南田って国語の先生だっけ」

と、また説明するの面倒くさそうな勘違いを始めるし。


夏井さんをそこまで動揺させることって何だったんだろう。
同じことを思っていたのか、雪さんは電話が終わるのを待っていられない顔で、カウンターに身を乗り出していた。

「海君どうかしたの?」
「社長が逃げたんだって」
「え?」
「海が就職するはずだった会社」
「“はずだった”ってことは?」
「社長が逃げて、って言うか会社自体が急に傾いたらしくて。だから内定もおそらくは…」

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