潰瘍性大腸炎雨のち曇り(3)バナナパフェ

母はミシンの内職をしていました。
私が小学校に入る前のことです。

母は大きな風呂敷に出来上がった物を包むと私を連れて市電に乗りそれを届けに行きます。

市電の窓から市役所の屋上の三角の塔が見えると目的地はすぐです。
仕事を収めた帰りにはデパートのレストランに連れて行ってくれます。
そして私の為にバナナパフェを注文してくれました。

ガラスのカップに生クリームとアイスクリームと斜め切りのバナナが花弁のようにあしらわれているパフェのおいしかったこと。

前の入院では空腹のあまり食べ物のことばかりを考えていましたが、今回は食欲が無く、それはたぶん嘔吐が激しかったせいかもしれませんが、何しろこのまま食への関心がなくなるかもという恐怖心がありました。

それで前の時とは別の意味でせっせと食べ物のことを考えて食への興味を無くさないようにしていました。(絶食治療が終わり、食事が始まってみればそれが馬鹿な考えだったとわかります、その頃にはおかずをぺろりと平らげていましたから)

そんな訳で絶食治療中は子供の頃の食べ物初めて物語を一つ一つ思い出してはノートに書いていました。その一つがバナナパフェでした。
今でも生クリームの味を思い出します。それは長い間に変換された味かもしれませんが、でもやはり今とは味が違うんです。

もう一度食べたいなって思うけど、乳製品を受け付けなくなってしまった今は、どちらにしてもかなえられない夢ですね。


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