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#17 デザイン独学と「模写」についてデザイナー夫が教えていること

デザインを勉強する時、「誰かのデザインを真似する」のは良くないことでしょうか?この質問を聞いた時、私【デザイナーの妻】は「人の真似はあまり良くないのでは?というか意味があるのかな?」と思いました。しかし、デザイナー夫のデザイン講義を聞いて、そうではないことを学びました。

誰かの真似をするのは、学習過程で大切なこと

まず結論から言うと、デザインを学ぶ過程において良いデザインを真似することはとても良いことです。ポイントは、真似をすべきは「良いデザイン」であるという点です。

ストアカのデザイン講義では、デザイナー夫がイラストレーターを使ってポスターを模写するプロセスを参加者に見ていただいています。(以下のウェブサイトにある[スイス・グリッド]の中から選んだポスターをひとつ模写しています。)描かれた円をなぞっていくと、それがグリッドに沿って整理されたデザインであることが見えてきます。並んでいる文字も、整頓されたグリッドに従って配列されていることがわかってきます。

模写していくうちに、ランダムに描かれているように見えた線や円が、法則に従って並べられていることがわかり、驚きました!【デザイナーの妻】は「グリッド」という言葉でさえこの講義で初めて知ったのですが、デザインを勉強されている方はすでにこのツールを使いこなしておられると思います。実際に自分で手を動かし、イラストレーターで同じものを作ってみると、美しく配列されたデザインを見つける感動は深いだろうなと思います。



観察日記#2でレポートしたように、デザ夫さんはイラストレーターで作業する時はショートカットキーをバシバシ使うので、両手の動きはとても早く、まるでピアノを弾いているかのように見えます。その実演を画面上で見たストアカ講座の参加者の皆さんは、目が丸くなっていました。「何が起きたんでしょうか?今…」と感想を述べられた方もいらっしゃって、【デザイナーの妻】は、「あ、このデザ夫さんの作業に圧倒されるのは私だけじゃないな👀」と安心したのでした。

デザ夫さんのイラストレータの使い方は、「上級編」と言うべきか?それとも「特殊なタイプ」と言うべきか、というお話はこちらのレポートをお読みください。

美術館で絵を模写すること

デザイン講義で言われているもう一つの点は、観察力を養うための訓練として、絵を模写することです。デザイナー夫自身も学生の頃は、よく美術館に通って絵を模写したそうです。

NYにあるメトロポリタン美術館に行くと、絵画や彫刻像の前に座り込んで模写をしている学生たちをよく見かけます。中には自分の絵の具道具一式を広げ、絵の前にスタンドを立てて(おそらく1日がかりで)絵を模写している人もいます。

デザ夫さんも美大で学んでいた頃、メトロポリタン美術館によく通い、ひたすら模写を続けたそうです。繰り返しになりますが、大切なのは、こうやって大勢の人の目に触れるような、素晴らしい作品を模写することです。日本では、美術館に自分の絵道具を持ち込んで模写するという作業は難しいかもしれませんが、原則は同じです。「マスター」の絵を模写するということです。

漫画を模写する話も出てきました。漫画やアニメーションの世界で優れた作品を制作している方たちが描いたものを見てみると、どこかに皆「手塚治虫さん」や「藤子不二雄さん」を感じると。みんなそうした「マスター」たちの作品を模写することから始めているのかもしれません。デザ夫さんも常日頃、「僕のデザイン人生の原点はドラえもんにある」と言っています。

「良いデザイン」はどこにあるの?

さて、では模倣すべき「良いデザイン」はどこにあるのでしょうか?自分の好きな絵やデザインが必ずしもお手本にすべきものとは限らないかもしれません。今回の観察日記を書いている最中に、デザ夫さんのtwitterで、こんな一文を見つけました。引用します。(なんとタイムリーなつぶやきをしてくれた!)



ヒントは、デザインの歴史を知るということか👀まず、始めると良いと書かれている「スイス・インターナショナル」とは何でしょうか?デザインの歴史を知らない【デザイナーの妻】は、スイス・インターナショナル・エアラインズ✈️かと思い、頭の中が「え👀航空会社?」という、はてなマークであふれました。

違います、違います。これは、「スイス・スタイル」というグラフィックデザインの様式(スタイル)のことで、別名「国際タイポグラフィー様式」と呼ばれているものです。1950年代にスイスで発展し確立された様式で、「デザインそのものの考え方である」とデザイナー夫は言っています。

「スイス・スタイル」についてほんの少し調べただけでも、ここに書きたいことがたくさん見つかりました。永世中立国スイスがその発展の中心舞台だったこと、戦後そのスタイルはスイスのみならずアメリカに、そして世界へと広まっていったこと、そのようにしてグラフィックデザイン業界に大きな影響を与えたこと…など。

【デザイナーの妻】が最近学んだ「グリッド」に沿ったデザインが、このスタイルの特徴であることも学びました。ふむふむ。「デザインとは何か」という問いについてディスカッションする際に「設計」という言葉が出てくるのも、この数学的なグリッドの存在を知ると納得がいく!

そのようにしてデザインの歴史を紐解き、その中で出会う「マスター」の作品を徹底的に鑑賞すること。そしてその作品を、ある場合は手を動かして模写し、ある場合はデザインをなぞって模写することで「良いデザイン」を身につけていくことができるのかもしれませんね。

ストアカの参加者の方から「良いデザインの見本はどこで見つけられるのでしょうか?海外だと見つけやすいのでしょうか?」とご質問をいただいたことがありました。その時は、英語で書かれた本やデザ夫さんのインスピレーションのもとになっている方の作品を口頭で紹介したりしたのですが、いつかこの観察日記でも「良いデザイン」の例を、写真や資料と共にレポートしたいと思います!【デザイナーの妻】が消化に時間を要するため、追々シェアできればということで少々時間がかかりますが、よろしくお願いします。

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観察日記#17読んでくださってありがとうございました。


デザイナー夫自身による、デザインと独学についての記事です。「独学」という視点で、デザイン教育について解説しています。


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