SKAdNetwork配信 / Self Attributing Network仕様
アプリマーケターの皆さん こんにちは!元気ですか!!毎年恒例、9月はApple製品周りで騒がしくなる月です。従来通り、新しいOSバージョンのiOS/iPadOS/tvOS 15は、9月にでてくるのではないでしょうか。今のところiOS15では、特にSKAdNetworkの目新しいバージョンアップは無い (リリース履歴) ので、今回のnoteは配信事業社である他社さんの仕様について説明したいと思います。
特にSANs (Self Attributing Networks:自己帰属型ネットワーク≒自社メディア完結型ネットワーク) と呼ばれる配信事業社さんの仕様について、Facebook、Twitter、Tiktok、国内だとSmartNewsさんあたりが該当しますでしょうか。SKAdNetwork配信の影響値を考えると、Facebook, Twitter、あとはSANsに該当しませんが、Google Adsが国内の配信規模として大きいので、彼らのSKAdNetwork仕様を深堀していきたいと思います。
なぜ、他社の仕様を説明する必要があるのか?
Appleからのポストバックの中に含まれるConversionValueのマッピングや、所謂カットオフタイム (インストール後○○時間後に発生したイベントはConversionValueに反映させない) の設定は、配信ネットワーク横断で統一の仕様を決める必要があります。そのため注力する配信先 (その多くがSANs+GoogleAds) の仕様に合わせて、これらを予めアプリ側で設定しておく必要があるからです。それでは早速、上述した各社の仕様を見ていきましょう!
■ Facebook (PUB: Facebook Audience Network)
FACEBOOK for Business (ビジネスヘルプセンター) のページはブラウザーの言語設定を読み取って、日本語設定であれば、日本語表示、英語設定であれば英語表示の様です。ニュースのセクションを見ると今日8/30現在、日本語ページの最新ニュースは、7/19投稿のFacebook Business Suite ~。英語のページは、8/30投稿の Get Your Shop Ready ~ のクリスマス商戦の記事になっています。Appleのサイトと同じく、英語の方がオリジナルで早いアップデートの様です。SKAdNetwork関連の多くは日本語訳されているので、そちらご参照いただければと思います。
ネットワーク仕様を横断して比べたいので、キーとなる指標を挙げて、軽く説明したいと思います。
【ConversionValue】
■ 設定方法 (Facebook イベントマネージャー)
① 推奨の設定を利用
- Facebook SDK for iOS ver. 8.0以上必須 。(Facebook Login使用時は9.0以上)
- Facebook SDKで取得するアプリ内イベントの中からSKAdNetwork配信向けのイベントが推奨される。
- 課金のバリューへの最適化を選択すると、イベントスロットが4つ (4-bit?) 使用される (バリューセット概要)
- イベントは最大63件が上限
- イベント優先度 (ConversionValueの値の優先度) 1は最低, 63は最高
② パートナーアプリ (MMP SDK) からインポート
- MMP管理画面から設定を行い、URLが出てくるので、それをFB管理画面で入稿設定する。
- MMP側の変更行うと、FB側で自動的に更新される
- MMP SDKに基づくイベント、あるいはFB以外の設定イベントをイベント設定スキーマと呼んでいる
③ カスタマイズ
- 課金のバリューへの最適化を選択すると、イベントスロットが4つ使用される
- 1イベント設定スキーマにイベントを1件、または複数件割り振りすることが可能
- 1イベント設定スキーマは1 (最低) ~ 63 (最高) の優先度が設定可能
ConversionValueのApple仕様から考えると、結構複雑に組み上げている感があります。Facebook SDKを入れて推奨設定にするとやりやすい様ですが、それが他の配信先にも適応となると、もしかすると少し難しい局面が出てくるかもしれません。MMP SDKのデフォルト設定はConversionValue ~63をフルに使うことができないものが多く、MMP SDK内の6イベント設定に留まることが多いです。そのため、MMP設定でFacebookをフル活用できない可能性を考えると、Facebookを主軸として考えるのであれば、ConversionValueのマッピングは、Facebook SDKの導入か、カスタムでの自社設計で運用/改善していくのがベストかもしれません。
【ConversionValue更新 カットオフタイム】
Facebook SDKかサポートされているMobile Measurement Partnerを使用して、または特定の期間内に (updateConversionValueの呼び出しはすべてインストールから24時間以内に実行) 手動で、アプリにConversionValue()ビットを実装する必要があります。
Facebookがこの制限をどこよりも早く発表したことは有名で、それ以後のカットオフタイムの流れを形成したと言えるのではないでしょうか。課金を主軸とするゲームはD3 (or インストール後72h) までデータ取得できた方が、データの精度が各段に上がると、大手ゲームディベロッパーのRovioはウェビナーで話していましたが。
【参考:キャンペーン構成】
■ 9 キャンペーン x 5 広告 (最大) = 45
1つのアプリにつきアクティブキャンペーンは9つ、同じ最適化タイプの1つのキャンペーンにつき広告セットは5つに制限
Apple仕様では、campaign-idは1配信先につき1~100のIDが割振ることができます。上記のFacebook配信仕様 (英語/日本語訳) はご参考。
■ Twitter (PUB: Mopub)
Twitterは日本国内だとスマホ関連のシェア率が高く、規模も大きいイメージがありますが、欧米だとどうしてもFacebookなど他のSNSサービスに押されてしまっている感があります。それが影響しているのか分かりませんが、TwitterのSKAdNetwork設定周りは、Facebookほど独自色が無い気がします。今後は分かりませんが、独自色を出すようなSKAdNetwork広告開発も、そこまで盛んに行われている様子は今のところないのかなと感じます。
【ConversionValue】
■ MMPの設定に依存
アプリの広告キャンペーンでは、インストール数とポストインストール数のアトリビューションを測定するためにTwitterは認定モバイル測定パートナー(MMP)と協力する必要があります。現在、ソフトウェア開発キット(SDK)または広告APIによるコンバージョン測定およびアトリビューションは提供していません。
【ConversionValue更新 カットオフタイム】
■ MMPの設定に依存(MMP側でcut-offの設定があれば設定可能)
【参考:キャンペーン構成】
■ 70 SKID = 70 campaign-id
100のSKIDのうちの30は、Twitterが広告商品の開発および性能向上の継続のために確保する予定です。残りの70のSKIDは、広告を配信するアプリごとに利用できます。
■ Google Ads (PUB: AdMob)
Google Adsは、SKAdNetwork関連の情報の更新をそれぞれのヘルプページで行っているようです。そして、トピックごとに各ヘルプページが細かく分かれています。Google Adsに対する包括的な理解を行う場合、結構な数のヘルプページを見る必要があるかと思います。さらに、Google Adsの独自路線的なことへの理解も行いたい場合、ヘルプページ記載の内容読解だけでも相当な時間が掛かるのではないでしょうか。Googleは兎に角プロダクト数が多い、アプリ関連でも他社を凌駕する数があるので、Googleエキスパートになるだけで、市場価値があるのではと思ってしまう程です。
ざっくりSKAdNetwork関連のヘルプページを見てみましたが、このiOS14 更新ヘルプページと、iOS14のQ&Aヘルプページに、SKAdNetwork配信に関する主要な内容があるようです。Google PlayのストアURLと同様、ページを日本語化する時はURLの末尾に hl=ja 、もしくは ?hl=ja を付けると、日本語ページがあれば日本語になります。豆知識ですが、Google Playのgl=XXはエリア指定で、日本国内を指定したい場合は、gl=jp に変換する必要があります。
もう一つGoogleの日本語訳ページで指摘したい事は、Googleが使う日本語訳は日本語での意味を分かりやすくする意訳がほとんど行われていないように感じます。恐らく翻訳の主体にGoogle翻訳のソフトを使っている様で、Googleの日本語ページで意味が?な箇所は、試しに英語ページも見てみることをお勧めします。それではGoogle AdsのSKAdNetwork仕様の該当箇所を見ていきましょう。
【ConversionValue】
■ SKAdNetworkに対応したConversionValueは未だない
「SKAdNetwork のコンバージョン値とアプリ キャンペーンはどのように連携するのでしょうか?」
SKAdNetwork のコンバージョン値は、キャンペーンの掲載結果を測定する際の参考になる場合があります。また、コンバージョン値をキャンペーンの最適化に組み込むための新しい機能が今後数か月以内に導入される予定です。
GoogleはAppleのConversionValueの事を、コンバージョン値と訳しています。Googleのコンバージョン値の設定方法(関連ヘルプ:これや、これなど)は既にあって、それをどうやってSKAdNetwork配信で適応していくかを準備しているようです。ヘルプページを読み進めると、何となくFacebookのSKAdNetwork手法と似ているのが分かります。いくつか例を挙げますと:
① 自社のアプリ内解析SDKでイベント計測 (firebase SDK)
前述したiOS14 更新ヘルプページ下部、「iOS 14 の変更に向けた準備」の箇所で、「Firebase 向け Google アナリティクスの最新バージョンにアップグレードし、gbraid パラメータを追加して、ご利用の SDK で iOS での Google のコンバージョン測定が確実にサポートされるようにしてください。」とありますので、恐らくfirebase SDKを使って、SKAdNetwork配信向けのアプリ内イベント計測を進めていることが分かります。
② パートナーアプリ (App Attribution Partner=MMP) SDK
GoogleのConversionValueに対する姿勢がまだ公表されていないので、Facebook, Twitterとは異なり、MMP SDKで設定するConversionValueマッピングには対応していない様に見受けられます。ただ、Google Adsが提供している管理画面には3種類(GoogleのModeled Conversion=コンバージョン推定、SKAdNetwork、AAP=MMP)の数値がそれぞれ分けて表示される様なので、Google内でAppleからのポストバックに含まれるConversionValueの実績数値は溜まっているはずです。何となく、FacebookのMMP SDKのマッピングと同じような形で対応してくるのではと推測します。
③ カスタマイズ
アプリ側でカスタマイズされているConversionValueマッピングに対応することは、各事業社にとって大事な事になるかと思います。ただ、firebase SDKの導入浸透率が7割近い(参考:Android数値/AppBrain発表)ことを考えると、Facebookの様にマッピングへのカスタマイズ仕様を用意する必要が無いのではと思ってしまいます。カスタマイズ=firebase SDKでのマッピングが成り立つので、Google AdsでカスタムのConversionValueマッピングをしたい場合は、firebase SDKでやってね、とGoogleが言える立場にあるのではと思ったりもします。
【ConversionValue更新 カットオフタイム】
■ SKAdNetworkに対応したConversionValueは未だなく、明確なカットオフタイムもない
これもGoogleはConversionValueに対する公式の見解発表をしていないので、カットオフ推奨の時間の記載は見当たりません。もし、Googleが独自のコンバージョン推定モデルを推し進める場合、SKAdNetwork管理画面上でConversionValue値の表示を行うだけにとどまり、Facebookの様に明確に○○時間後と公表しない可能性もあります。
【参考:キャンペーン構成】
■ キャンペーン推奨個数=8個まで
※1キャンペーンに導入できる最大アセット (≒クリエイティブ) 数は20
「アプリ インストール キャンペーンの推奨個数(8 個)を超えるキャンペーンを実施した場合、どのような影響がありますか?」
アプリ インストール キャンペーンを iOS アプリごとに 8 個以下にまとめることをおすすめするのは、SKAdnetwork のキャンペーンの制限範囲内で最高のパフォーマンスを維持するのに役立つからです。実施するキャンペーンを 8 個以下にすれば、各キャンペーンでコンバージョンのシグナルを十分に受け取ることができます。これは絶対に守らなければならない制限というわけではありませんが、アプリごとのキャンペーンが 8 個を上回ると、掲載結果や、SKAdNetwork のレポートの質が低下する事態につながります。
単純計算だとcampaign id= 8x20 = 160になり、Apple仕様の最大100を超えます。これはModeled Conversion (推定コンバージョン) モデルとMMP計測モデルを導入しているGoogleだからこそ出来る技だと思います。推奨8個のキャンペーン以下のクリエイティブに対して、自動的にSKAdNetwork のcampaign idを振り分けることが出来る仕組みを作ったのかもしれません。
例えば、各キャンペーンのSKAdNetwork数値の集計で、コンバージョンのデータが少ない内は8キャンペーンに対してのみcampaign idを割り振り、推定コンバージョン数が多くなってきたクリエイティブに対してcampaign idを付与しながら、付与したidの集計は大元のキャンペーンに集めるような流れでしょうか。恐らくGoogleの中でも作った人に直接聞かないと、この仕組みの種明かしは出てこないのではないかと思います。もちろん雇用契約で口止めされていると思いますが。
最後に
今回は我々nend、3rd partyネットワークかつ大型の配信事業社としての目線も踏まえて書いてみました。昨今のダイレクトレスポンス型のスマホ広告は、1st partyのネットワークであるSANs系+Youtube等を保有するGoogle Adsの影響が大きく、先ずそこを攻略しようとするディベロッパーさんが多いのが現状です。海外で活躍する海外ディベロッパーさんは、使用する金額が大きく、彼らも同様に先ずSANs系の攻略に投資する傾向があります。そのため、たとえ国内のアプリSDK規模で勝るとも劣らない我々nendであっても、SKAdNetwork配信の時には、彼らの仕様を知っておく必要が出てきます。
その上で、ディベロッパーさん、ダイレクトレスポンス型を運用するマーケターの皆さんが、正しい指標でさらに儲かるためには何が必要か、どのようなシステム設計にする必要があるのか、常日頃考えながら改善していかなければいけないと思っています。
少しずつですが確実に、iOS/iPadOSはSKAdNetwork配信に傾斜しつつあります。今回の記事で、少しでもSKAdNetworkに対する理解と今後の展望に関する理解が深まり、どこかでnendでのSKAdNetwork配信に至って更に理解が深まることを切に願います。次回はiOS15リリース、SKAdNetwork実践編、Android Chromeのクッキー周り等、トピックは結構ありますが、何について書こうかなと吟味しています。もしリクエストがあれば、twitter (@nend_pr)、nendの公式facebook、nend (smartphone ad network) などでコメント等いただければと思います。それでは皆さん、次回の更新までお元気で!!