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【Android】ストア (Google Play Console), OS (Android 12), ブラウザ (Chrome 95+UA-CH)

アプリディベロッパー/マーケターの皆さん こんにちは!アドネットワークnend (ネンド) の「えばんじぇりすととーる」です。iPhone13 (or PRO) 買いましたか? iOS/iPadOS 15 エンジョイしてますか?ネットニュース等で市場の熱量を見る限り、恐らく皆さんのiPhone13/iOS15に対するリアクションは、もしかするとそこまで熱狂的ではないかもしれません。

モバイル広告の分野で見ると、iOS/iPadOS 15リリースのインパクトは多少ありますが、前回の14の時と比べるとそこまで熱くないです。そこで今回は視点を少し変えて、もう片方のOS、Android OSについて最新の動向を見ていきたいと思います。準備はいいですか?それではレッツゴー!

Android:①ストア + ②端末OSバージョン + ③Chrome (ブラウザアプリ)

モバイル広告目線で、国内のAndroid市場の流れを捉えたい場合、この3つの分野に分けて考えた方が、物事の理解がしやすい気がします。最新情報も取り上げながら、それぞれ見ていきましょう。

【ストア:Google Play】 

先ず、Google Playのストア (Play Console) にはAndroidプラットフォームの大枠を制限する「ディベロッパー プログラム ポリシー」(全文) があります。Googleはここで、Androidプラットフォームでの様々な規定やルール、我々広告SDK事業者にも関係のある技術仕様などを細かく定めています。AppleのApp Storeと同じように、ポリシー違反になってしまうと、会社の規模に関わらず (恐らく)、Google Androidの輪の中で上手く仕事ができなくなります。

GoogleはPlay Consoleのヘルプ上の「Google Play ポリシーの最新情報」で、ストアポリシーの更新情報を提供しています。今日 (10月21日) 現在、Google Playポリシーの最新バージョンは、変更通知の日付が2021年7月28日のものになり、この「概要」ページで、ポリシーの変更内容の確認と実施日の予定確認ができます。今回の変更では広告にとっていくつか大事な要素を含んでいますので、ざっと見ていきましょう。

■ データ セーフティ セクション

GoogleもAppleが現在ディベロッパーに提出必須にしている、取得ユーザーデータの情報開示を来年4月1日から実施するそうです。

Appleは当初この施策を「Privacy Nutrition Labels」と呼んでいましたが、今は「Appのプライバシー」とストア上での呼び名を統一しています。iOS/iPadOSのディベロッパーは新規アプリと既存アプリのアップデート審査時に、必ずこの取得ユーザーデータを添えてアプリ申請をしなければいけません。

Googleも同様のプロセスをGoogle Playのストアで導入しようとしています(Googleリリース)。サイト内にも実施時期のロードマップがありますが、以下ざっとまとめます。

ポリシー箇所:「ユーザーデータ」以下「データ セーフティ セクション
2021年10月~:ディベロッパーはGoogle Play コンソール上で、取得ユーザーデータの申告ができるようになる。
2022年Q1 (1~3月):ユーザーはGoogle Playストア上で、データセーフティセクションを見ることができる。
2022年4月1日~:本格稼働。この時までにセクションの掲載情報の承認がされていないアプリがディベロッパーアカウント内にあると、「新しいアプリの送信やアプリのアップデートは不承認となる可能性」がある
(参照記事:Googleブログ, ロードマップ)

■ 広告ID (GAID/AAID)

Android端末の広告識別子 (GAID) も、取り扱い方法が変更になります。変更の概要はPlay Consoleヘルプページの「広告ID」でまとめて書かれているので、そのページも合わせてご参照いただければと思います。

これまでGAIDが広告配信以外の目的で、端末を識別する様々な用途に利用されてきたこともあり、端末上での設定がオプトアウト=所謂Appleの仕様で言うLAT (Limited Ad Tracking) になっていたとしても、端末の広告識別子がゼロの文字列になっていませんでした。

これが今回変更され、ユーザーのオプトアウト設定が、広告識別子のGAID (AAID) にしっかり反映されるようになります。AppleでのiOS14より前のオプトアウト時代は、このLAT率が全体の30%前後を占めていたので、GAIDのLAT率も恐らく似たような数字になるだろうと考えられています。前述の項目と同様に広告IDについての予定を以下まとめます。

ポリシー箇所:「広告」以下「Android 広告 ID の使用
2021年10月4日~:GAIDのLAT化が本稼働
2022年初旬 (恐らく1~3月)~:全ての端末、アプリに対して適応
(参照記事:Android nendSDK, ストア仕様_AdvertisingIdClient)

■ アプリセットID (App set ID)

上述の広告IDの取り扱いを厳格化にすることで、端末の設定によっては、固有の端末識別ができなくなるケースが出てきます。そこでGoogleはAppleのIDFVと同じような役割・目的(広告用としてではなく、アプリ内解析や不正防止に活用する目的)を定めた「アプリセットID」の導入を始めたようです。

AppleのIDFVはディベロッパーアカウント単位で固有の端末を識別することができ、同一アカウント内 (会社単位) でIDの重複は出ないようになっているため、個々の端末識別ができます。IDFVはプッシュ通知の管理やアプリ内行動解析などで使われることが多いです。恐らくGoogleのアプリセットIDも同じような使われ方になるのではないかと思います。

アプリセットIDのリセットについても、こちらのリリース記事の中腹に記載があります。IDがリフレッシュされる条件は、ユーザーが 1)そのディベロッパーのアプリを全てアンインストールするか、2)13ヶ月間どのアプリもそのユーザーのアプリセットIDにアクセスしなかった(使用されなかった)場合とのことです。Google Androidでは新しい識別子になるので、今後どのように活用されるのか議論されていくかと思います。

ポリシー箇所:「ユーザーデータ」以下「アプリセットIDの使用
2021年9月1日~:アプリセットIDのディベロッパープレビューを提供開始
(参照記事:Android Developers Blog, Developerガイド)

【端末OSバージョン:Android 12】

日本で一般的に流通しているほぼ全てのAndroid端末は、Google Playストアが利用できるGoogle Mobile Serviceに対応しています。そして日本はGoogle Play以外のAndroidストアが余り伸びていないため、上述のGoogle Playストア全体の仕様変更が、ほぼ全ての国内Android端末に影響します。

そして、Android市場では各国で端末メーカーが乱立しています。日本はSonyのXperiaシリーズのシェアが比較的高いでしょうか。国内AndroidのOSバージョンを考えたときに、先ず考慮しなければいけないことは、Android OSを開発するGoogleはOSバージョンをどんどん新しくしますが、新しくなったOSのアップデートを実際に行うかの判断は、端末メーカーに委ねられているということです。そのため一律でOSアップデートを行うAppleのiOS/iPadOSとは異なり、AndroidのOSアップデートの市場への影響値は限定的になりやすい傾向があります。

少し説明が長くなりましたが、上述のことを頭の片隅に入れておきながら、Google Androidの最新OS:Android 12(API レベル 31)についてプライバシーや広告と関係がある箇所をサクッと見ていきましょう。

■ プライバシー ダッシュボード

Android12を搭載した端末では、以前のOSバージョンの端末と比べて、プライバシーが強化されています。Google Playストアでのセーフティセクションの追加もそうですが、Googleは先ずプライバシーの見える化に対して開発を進めているようです。

プライバシーダッシュボードは、その名前の通り、端末のプライバシー専用の管理画面のようで、そこでプライバシーにかかわる機能(位置情報、カメラ、マイクなど)が、どのアプリからいつアクセスされたのか見られるようになっているそうです。

アプリの内部に組み込まれている様々な種類のSDKによって、プライバシーに関わる情報を取得するケースもあったりするので、Android12が正式にリリースされた際、もしかすると思ってもいなかったアプリがこの管理画面上に出てくる可能性もあるかもしれません。AppleもiOS14リリースの時、プライバシーの見える化に注力していて、TikTokのアプリがクリップボードの内容を無断で読み取って炎上したニュースは記憶に新しいかと思います。

■ おおよその位置情報

位置情報に関するプライバシー強化は、AppleのiOS15から追加された「IPアドレスを隠す」safariの機能と、iCloud+のVPNサービス「Private Relay」が記憶に新しいですが、Googleの説明を読むと、何か別物というか、これまで通り正確な情報を共有するときにのみ、ユーザーからのオプトインが必要になるようです。位置情報の程度と頻度について、見やすい表 (URL) になっていたので、そちらも合わせてご参照いただければと思います。

■ 広告ID / マニフェストファイルへの宣言追加

nendSDK Androidのサイト内でも説明をしていますが、Android12以降のAndroid OSを搭載した端末から広告IDを取得する際、AndroidManifest.xmlのマニフェストファイル内で以下の宣言をしておく必要があります。

 <uses-permission android:name="com.google.android.gms.permission.AD_ID"/>

2022年上旬から本格的に広告IDのLAT化が稼働した際、端末のオプトアウト状態に関わらず、この宣言がアプリ内で抜けていると、全ての広告ID (GAID/AAID) が、LATの00000列になるとのことです。できれば今のうちに、宣言の箇所を入れてアプリのアップデートされた方が良いかと思います。

Apps with target API level set to 31 (Android 12) or later must declare the normal permission com.google.android.gms.AD_ID as below in the AndroidManifest.xml in order to use this API.
・This permission will be granted when the app is installed.
・If this permission is not declared, the returned value will be 00000000-0000-0000-0000-000000000000 starting early 2022.

【ブラウザアプリ:Chrome 95+】

Android端末でよく使われるブラウザアプリは「Google Chrome」かと思います。Androidは端末によって、端末メーカーが提供するブラウザアプリがプリインストールで入っていることがあります。Samsungが開発するGalaxyプリインストールのブラウザアプリなどが代表的でしょうか。私のHuaweiのAndroid端末には「ブラウザ」という名前の付いた、Huawei提供のブラウザアプリがプリインストールされていました。Androidユーザーの中には、端末メーカー提供のブラウザアプリを使う人もいるかと思いますが、日本のAndroid端末では、Google Chromeが良く使われるブラウザアプリかと思います。

Google Chromeの仕様を調べたい時は、先ずインストールされているChromeアプリを開き、そのアプリのバージョンを調べる必要があります。確認の仕方は、ブラウザ画面内の右上に位置する縦3ポチをタップします(iOSのChromeアプリの場合は右下の横3ポチ)。その中に歯車アイコンの「設定」があるので、それを選択すると「Chrome について」とか、「Google Chrome」と記載がある箇所が出てくるので、それを選択。そうすると「バージョン」と書かれた項目が出てきて、そこに記載の数字(今の最新は94.X.XXXX...)がChromeブラウザのバージョンになります。

Chromeのバージョンは今後の予定、特に各バージョンの大体のリリース時期が決まっています。予定はこちら。バージョン95のリリースが今月、96は11月、97は2022年1月。各バージョンでアップデートされる内容もロードマップとして公表されています。ロードマップはこちら

Googleが2019年8月に提唱したサードパーティーのクッキーを無くす一連の取組「プライバシーサンドボックス」は、このChromeのバージョンが密接に関わっています。プライバシーサンドボックスの中で、「データ収集の制限」の一つに「User-Agent Client Hints」という新しい取組があります。この取組は広告と関係が深いため、少し整理して見ていきましょう。

■ User-Agent Client Hints

GoogleのDeveloper向けブログに、User-Agent Client Hints (UA-CH) の概要が記載してあります (英語 / 日本語)。UA-CHの資料はいくつかありますが、Googleがwebのディベロッパー向けに提供している学習サイト「web.dev」の中で、UA-CHについて説明を行っている個別のサイトがあります。youtube動画もあるので、概要の理解を深めるには良いページかと思います。

いきなりユーザーエージェントの応用編みたいになってしまったので、基本的なことについて少し。ユーザーエージェントには個々の端末の情報が集約されています。OS、OSバージョン、ブラウザの種類、ブラウザのバージョン、端末の種類など。端末を特定することに使われる情報が含まれているため、デジタルの分野で広告を含む様々な事業者が、このユーザーエージェントの情報を広く活用しています。

例えば、一般的なウェブサイト構築などで、OSごと、端末ごと、ブラウザごとなどに表示確認のデバッグ作業を行うことがあります。その際、端末のユーザーエージェントを偽装変更して、確認作業をすることがあります。偽装変更する簡単な方法の一つに、PCでChromeブラウザアプリを開いて、ページの空白箇所を右クリック、そこで出てくる「検証」という項目をクリックすると、偽装できる端末のプルダウンメニューが通常左上に出てきます。その中で例えばiPadを選ぶと、iPadのユーザエージェントへ変更ができます。

変更後、Google検索で「User Agent Checker」と検索して出てきたサイトをいくつか見てみると、偽装変更した端末のユーザーエージェントが表示されます。一般的にユーザーエージェントは、常時意識する情報の一つではありませんが、GoogleのUA-CHを理解する上でも、是非今のうちから意識して慣れ親しんでもらえると良いかと思います。

では、簡単にUA-CHについて見ていきましょう。

◇ User-Agent Client Hints 説明

前述したこの「web.dev」個別ページと、中にあるyoutubeのこの辺りの動画 (URL) を見ていただければ、今まで簡単に取得できていたユーザーエージェントの情報が、画面サイズやAndroid OSバージョンなどの細かいトークン (パラーメーター) に細分化されて、以前の様に端末の特定が、とても簡単にできなくなることが分かるかと思います。トークンの種類の参照は、これとか、このサイトを参照すれば良い気はしていますが、念のため、今後の変更等に注意する必要はあるかと思います。

■ User-Agentの文字列削減/短縮化

GoogleはUA-CHの話を進めると同時に、Chromeブラウザから取得できるユーザーエージェントの文字列の削減/短縮化の話も進めています。こちらのページ (URL) に簡略化についてのロードマップが載っています。では、それぞれのフェーズをChromeバージョンと共に見ていきましょう。

フェーズ1 (Chrome 92~):navigator.userAgent, navigator.appVersion, navigator.platform にアクセスすると、開発者ツール上で注意喚起が出ようになる。

フェーズ2 (Chrome 95~100):ユーザーエージェントの文字列短縮化の初期トライアルをテスト実装して、ユーザーエージェントをオプトインして使用できるようにする。少なくとも6ヶ月のテスト期間とフィードバック期間を設ける。※テスト期間の予定終了日:2022年4月20日

フェーズ3 (Chrome 100 - 
2022年3月29日リリース予定):
初期トライアルの文字列簡略化を本格稼働。サイトの移行期間として、リリースから少なくとも6ヶ月の猶予期間を設ける。

フェーズ4 (Chrome 101 - 
2022年4月26日リリース予定):
<minorVersion>の文字列が短縮化されたChromeのリリース。上述ロードマップのページ内「Sample UA Strings:Phase 4」参照。

フェーズ5 (Chrome 107 2022年10月25日リリース予定):デスクトップ向けのChromeブラウザで本格適応。ユーザーエージェントとそれに関連するJavaScript API (navigator.userAgent, navigator.appVersion, navigator.platform) を短縮化させて提供。「Sample UA Strings: Phase 5」参照。

フェーズ6 (Chrome 110 2023年2月7日リリース予定):Androidの携帯端末とタブレットのChromeブラウザで本格適応。「Sample UA Strings: Phase 6」参照。

フェーズ7 (Chrome 113 2023年5月2日リリース予定):クローズ。Chromeブラウザ内の全てのサイトに対して、短縮化されたユーザーエージェントとその関連の新しい仕様が適応。「Sample UA Strings: Final Reduced State」参照。

終わりに

今回はAndroidについて、気が付けば再来年2023年の予定の事まで書いてしまいました。製品の種類は、携帯電話/スマートフォンという同じ分野に属するとはいえ、AppleのiOS (iPadOS)と、GoogleのAndroidは、それぞれ異なる形でユーザープライバシー保護の強化に向けてアプローチをしています。両社のユーザープライバシー保護に対する方向性は、パッと見ると、似ているように見受けられるかもしれませんが、仕様等含め細かいところでは、それぞれが全く別物と捉えても良いかもしれません。

これまでのスマートフォン広告は、全般的な配信の手法や仕様の面で、OSごとに分けて考えて製品を作ったり、どちらか一方に合わせて調整するといったことが、どちらかというと少なかったように思います。様々な観点から、少なくとも積極的に行われてきたことでは無かった気がします。

ただ、昨今のAppleのSKAdNetwork配信の広がりから、スマホ広告では、OSごとの違いが徐々に目立つようになってきました。広告という形態の本質的なところに変化はないはずですが、iOS/Androidのプラットフォームの違いだけで、パフォーマンスという広告効果が変化してしまう背景には、上述した細かい違いが今後、影響してくるかもしれません。

なるべく分かりやすく、情報をまとめたつもりでしたが、いかがでしたでしょうか。私自身、これほどAndroidだけのことを考えたことが、これまで無かった気がします。iOS/iPadOSと比べて、日本語に上手く翻訳されたページは多かったですが、情報の内容自体に対して不慣れな箇所が多々あったので、今回の執筆は結構時間が掛かりました。もし内容でご不明な点等ありましたら、お気軽にnendへの問い合わせなどでご質問いただければ思います。

季節の変わり目で段々肌寒くなってきましたので、皆さんお体に気を付けて、次回お会いするまでお元気で!