君が私を好きじゃないなら、君に好きとは言いたくない
台風の前日、非常に久しぶりに彼に会った。夏休みは彼の留学や私の旅行が重なってほとんど会ってなかったし、唯一会った日もちょっとギスギスしてしまったから、正直言うと彼に会うのは気が重かった。
さらに、彼の私に対する気持ちも薄れているような気もして、どんなテンションで会えば良いのかも分からなかった。
とは言え、旅行のお土産を渡したかったので彼の家に向かった。
「もうすぐつく」
LINEしつつバスを降りて歩いていると、途中まで迎えに来てくれた彼を見つけた。嬉しいはずなのに、どうしても素っ気なくなってしまって「久しぶり」としかいえなかった。
家に上がってから何をしていたか覚えていないけど、お風呂に入ってから一緒にベッドに入った。
ベッドの中で話してる時、彼が言った。
「自分からキスせえへんよな」
「そう、だね」
「なんでなん。はずかしいん?」
「そうかもしれない」
「かもってなんなん。ほんまよう分からんわあ」
別に恥ずかしいからキスしないんじゃない。君が私のことを好きじゃない気がして、嫌がられるんじゃないかって考えたら怖くてできないんだ。だって、この前まで、冷めそうだったとか言ってたじゃない。LINEで好きかどうか聞いた時「まあ、好きかな」とか曖昧なこと言ってたし。君はもう私のことはそこまで好きじゃないんでしょう。君は前ほど私にくっつくこともなくなった。
これを全て彼に言えたらどれだけ楽だろう。でも、返答を聞くのが怖くて怖くてできなかった。今が良ければそれでいいんだ。前ほど良い関係じゃないにしても、本心を知って傷つくよりはいいから。
君が頭を撫でてくれることも、「美味しそうな顔して食べるね」って笑ってくれることも、なんだかんだ手際がいいことも、全部好きだけど、一方的なようで何一つ伝えていない。
好きになったらもっと猪突猛進に好きを伝えられると思っていたのに、彼からの愛情が揺らいでいると知ってから、こんなに臆病になるとは思っていなかった。君が私を好きじゃないなら、君に好きとは言いたくない。
でも、好きなんだ。
次の日、大学が台風で休講になり、バイトもなくなったため、朝から一緒に過ごせることになった。何をすることも無く、グダグダお昼寝をしていただけだけど、自分からくっついて寝た。ちょっとでも、好きが伝わるように気持ちを込めて。今までなら日中自分からくっつくことがなかったから進歩だ。
彼がどう思ったのかは定かではないけど、何もしないよりかはいいんじゃないかな。
今後も、自らスキンシップを増やして愛情表現をしていこうと思う。彼への愛情表現が足りなかったから彼が冷めかけていたのだと信じて。