テトラポッドにうちひしがりて
あれから、僕は3秒で寝た。どこかの漫画の主人公だ。似ている点とすれば、少し勉強ができないぐらいだ。
友達もできるし、多少はモテていた。あいつはそれに比べて貧相なもんだ。普通の人間ができることはできない。何か問題に直面してはすぐにロボットに助けを求める。
そんなあいつを僕は嫌いだった。誰かに縋り付いて生きていくのであれば、尻をだして踊っていたほうがいいと思っている。
右手がいたい。目が覚めた。寝ていた時に風景と違う。ベットから落ちていた。掛け布団は僕と一緒に落ちてはくれなかった。
「おい、俺をまもれよ。地震の時にかぶれって小学校の先生に言われただろ。」まだ、寝ぼけている。寝る前と寝起きは昼間に比べて性格が一変してしまう。病気なのかどうかは知ったことではない。
体はあまり大きくないにしろ、全体重が右手にかかっていたので、血が回らず、しびれている。
血が多く回ると、かゆくなるとかなんとかきいたことがある。ま、かゆくはならなかったが、、、ね
「フィユン♪」巧みな口笛が聞こえる。
ラインの音だ。すぐに分かった。僕はこの音をまねする。力が抜けたような口笛だ。口笛には自信があった。幼いころからこの特技にはみんな羨ましがっていた。
寝起きのせいか、空気を穴に通す量が減っている。唇も乾燥している。コンディションが悪すぎる。
それでもあきらめずに挑戦し続けた。
いつまでたって音を再現できない僕はぶつぶつ文句をいいながら二度寝をした。
ラインのことはすっかり忘れていた。
朝起きると9時を過ぎていた。焦った。冷や汗がすごい。追われる時間から逃げるがごとく、しまうまのように走って準備をした。
冷蔵庫にあった飲むヨーグルトをカバンの中に入れて駅にむかって走った。
しまうまなどの草食動物には第六感があるという。敵を察知する能力だ。それにより、早くから敵から逃げれるようになる。だが、あまり進化しすぎると逆に敵が死んでいってしまう。ただでさえ、持久力も、勝っているのに。
そこら辺の絶妙な感じが自然の素晴らしいところだと感じている。
僕も第六感があるのかもしれない。
このままでは時間に間に合いそうではなさそうなのを察してしまったからだ。
「これが、第六感か!!人類初だぞ!そこの高校生俺は神からこの才を授かったただ一人のだぞ、はは、はは、は、は」
こんなみじめな気持ちになるぐらいならないほうがましだ。「5」という絶妙な量が人を支えているのだろう。
六になるとろくにもならない。なんて考えながら走っていた。
電車につくと、今日も人混みだ。もしかしたら昨日より人がおおいかもしれない。少し時間が違うだけでこんなにも変わるものなのか。
あっけにとられてと同時に明日はちゃんと起きようそう決心した。
今日は少し細い「く」になりながら電車に乗った。
大学についた。完全に遅刻だ。
「おい、なーにやってんだお前は、遅刻するなんていつぶりだよ。」
彼は、中学からの幼馴染の綾辻俊だ。綾と俊のはいとへんとにんべんが違うだけだったので入学式後の自己紹介で印象に一番残ったのを覚えている。
俊はずっといじられ役だった。面白いことをいうこともあればとんでもなくつまらない時もある。
だが、一番信頼をしている。悩み事があればお互いに相談しあっている。
「ちょっと、寝坊してな。教授なんか言ってたか?」
「あー、怒ってたよ。しかも矛先は俺に!なんで橙弥じゃないんだよ。」
「すまん、すまん後でなんかおごってやるよ」
「絶対だからな。」
申し訳ないことをした。僕が怒られるときはいつも僕よりも先に俊が怒られている。
いつも、ありがとう。これからもよろしくな。
そう、いつもおもっている。
「教授、お疲れ様です!!」
おもっきしドアを開けた。
何食わぬ顔で研究室へ入っていった。心臓は顔とは真逆だ。教授に聞こえていないか心配だ。
「はあ、なんだその顔は。にこにこしてたらいいってわけではないぞ。早くしたくしなさい。」
良かった。怒られなかった。ありがとう俊
「はい!了解です教授!!」
万が一のことがあるかもしれないので、教授の顔を窺いながらにこにこしていた。
なぜ、僕には怒らないのか。自分の第六感がなにやら騒いでいる。嫌な感じしかしない。覚悟して今日、一日過ごそう。そう決心した。
僕は、白衣をきた。白衣っていっても医者を目指しているわけではない。植物の品種改良について勉強と実験をしている。
昔は文系だった。だが、文章というものに限界をかんじた。決して面白くないわけではない。だが、品種改良という未知のものについて興味を持ち始めた。
という口実で進路相談をふりきった。本当のところは俊に半ば無理やり連れてこられた。
あいつも一人で行くのが寂しかったんだな。かわいいやつだぜ。
まあ、この研究も楽しいし、教授にも恵まれている。悪くない選択だった。
品種改良は遺伝子の変化を利用しているものだ。遺伝子は、親から受け継いだすべての情報が書き込まれたゲノムの仲に散在している。
いわば設計図となるものだ。
ゲノムは一般的にDNAとよばれているだろう。
今までの品種改良は。後輩や人為的突然変異、遺伝子組み換えをしていた。その研究もまだしているが、将来的にゲノムの編集技術が可能になるように吟味している。
ゲノム編集技術がすすむと、狙った性質を変えることが可能になってくる。もっと、悪天候などに強い野菜ができるようになってくる。
そんなものを作れるように日々頑張っている。教授はすごいもんだ。これまでもいろいろな研究実績を残している。今日も少ししわの増えてきた手を絶えず動かしている。
この仕事が大好きなんだろう。
俊と一緒に実績を出せるようになれたらいいなと思っている。
植物は改良しても倫理的に大丈夫だ。人もやってきたかったが、我慢しておこう。
今日も順調に研究も講義も進んだ。
少し進歩したような気がする。
「橙弥一緒に帰ろうぜ!」
俊の声だ。
「てか、お前スマホ持ってないのか?連絡しても全然返信ないんだけど、俺が実は寂しがり屋だってわかってるだろーがよ」
そういえば、今日はスマホを触ってない気がする。カバンの中を探した。
無い。ない。どこをさがしてもない。
今日は触ってないのなら、多分家か
「すまん、多分家に忘れてきた」
俊の性格はわかってた。いつも助けられてるのに謝りたい気分だ。だが、少し見ていて面白い。この感じにいままで助けられてきたのだろう。
朝の約束通り俊に何かおごることにした。
「なにが食べたい?どこでもいいけどできるだけな?わかってるよな?」
「わかってるよ、好き屋ならいいよな?俺はなー高菜明太牛丼の特盛りが食べて―。」
「お前、高菜明太なんて食べれるのか?大人になったんだな、俊も。」
「はあ?いつまでも子供だと思ってんなよ?今度、酒の飲み比べで勝負するぞ!」
「ああ、望むところだよ!!!」
やばい、どうしよう。僕はほろよいを少し飲むとすぐに酔っぱらってしまうぐらい酒にだけよわい。勢いであんなこと言ってしまったが、心配になってきた。
好き屋についた。俊は高菜明太牛丼の特盛りを僕はわさび山かけ牛丼の大盛りを頼んだ。
「橙弥、わさびなんか食えるのか?」
どうやら俊はわさびが食べられないようだ。少し上に立つことができた気分だ。
わさびは小学生のうちから食べれていた。きっかけは、当時やっていた少年野球で入賞をしてチームで焼き肉屋に行った。
少し、変わった焼き肉屋で焼き肉がメインだけれど寿司やカレー、アイスなどが食べ放題のところだった。
いかにも小学生っぽいことだけど、みんなで「ロシアンルーレット」をすることになった。
まだ全員未熟だ。大人な子供なんて誰一人といない。罰ゲームは壮大なものだった。マグロの中に大量のわさびを塗った。
見るとばれてしまうので、目をつぶって何番か選んで食べさせてもらうものだった。
僕の番はすぐに来た。三番目だ。寿司の残りは8個ある。まだ、わさび入りは出てないので八分の一の確率だ。
僕は安心しきっていた。八分の一なんて引くわけがないと。
だが、現実は違った。八分の一なんて嘘だ。結局でるかでないかの二分の一だ。
その二分の一をひいてしまった僕は一瞬で吐き気に襲われた。僕はトイレに駆け込んだ。大のほうのドアを開けようとしても開かない。鍵がかかっている。
焦りまくった。開かない、開かない
どうしたらいいのか。吐くのはだめだ。食材を粗末にするのは僕の生き方に反しているからだ。
僕は勢いをつけて飲み込んだ。鼻の奥がス―とする。これがわさびなのか。
これが病みつきになってわさびをいろんなものにつける人がたくさんいるのだろう。
飲み込んだ後すぐに、大のほうのドアが開いた。入っていたのは、大柄の大学生だ。調子に乗ったのか、大食いの勝負かなんかして腹を壊したのだろう。
飲食店で吐くことは失礼だ。小学生でもわかった。あの大柄な大学生のおかげで吐かずに済んだのだ。
少し感謝をしている。
僕は、何事もなかったように元のいたテーブルまで戻った。
「量多すぎだろ。吐くところだったんだけど。」
強い口調で言った。
首謀者と僕が言い争っている中。わさび入りの寿司をもくもくと食べている。チームメイトがいた。変な顔を一切せず。我慢してたべているわけではなさそうだ。
「辛くないのか?」
心配そうに聞いた。チームメイトはけっこうな量を食べていた。あの量を食べていて心配にならない人はいないと思う。
「全然おいしいよ。少し辛いけどあの辛さがたまらないんだ。なんでみんなは食べれないの?」
「あの『スーッ』とした感じがいいのか?やっぱり。でも、まだ小学生だろ?もしかして、コーヒーとかもいけるのか?」
「コーヒーも美味しいよね。やっぱコーヒーはブラックでしょ。」
これで僕は勘違いをした。辛い物や苦い物を食べれるようになったら大人なんだと。
子供たちが辛いや苦いを言っているのに「そんなことないよ」と言ってい来る大人はもしかしたら味覚がおかしいのか、舌を使いすぎて機能が衰えてきたのかだ。
と思っていた。
だが僕もコーヒーは飲めないにしろ、あんなけ大量のわさびを食べたので少しは耐性か辛さのコーティングをされていた。
好んで食べることは少なかったが、何かの料理についてきたときは必ずかけて食べていた。
やっぱりわさびのおいしさは鼻の奥が『スーッ』とするところだ。でも最近は『スーッ』とするだけならミントでいいのではないかと。
その通りだ。今なんてミントのお菓子ですら出ている。わさびの疑似体験はできるのではないか?一回試してみたい。
よく、土曜の六時半からタレントが全国の農業者の元にいきそこの料理を食べさせてもらうという番組がやっている。
高級肉の日もあれば、山菜の時だってある。すごいさだとは思う。
ある日見ていると、その日はハズレだった。わさびの日だ。その番組にでているタレントは、とれたての生わさびをそのままかじった。
寒気がした。想像するだけでも耐えれない。だが、そのタレントは 「甘い!」と叫んでいた。
甘いわさびになんて出会ったことがない。ましてはかじるなんて。僕はあることを思い出した。
大根おろしは怒っている人にやらせると辛くなると。テレビでやっていた。理由は、大根の細胞がおろすときに過剰に壊れて辛み成分が出るかあらだそうだ。
大根も降ろしていなかったら。辛くなんてないし甘いだってある。
もしかしたらわさびも同じで、おろすと細胞が壊れて辛くなるのではないかと考えた。
大根と同じように考えると、生でかじってもそこまで辛くないのではないのか?
スライスして何かに入れたりすると、革命がおこるのではないのか?
スーッとするがどこか甘くなるのではないか?小学生でも自分を大人に見せることが可能なのではないか?
なんてことがあった。これ以降僕はわさびに耐性が付いてしまった。あのチームメイトはどうなんだろう。あの勢いのまま成長していたら、大根おろしの感覚で食べてそうだ。
ご飯のおともにわさびなんて言ってたら、どうしよう。あいつの周りのやつは少し引くんじゃないか?
もう、変わってるやつだということはわかっているだろうが。
そんなことを牛丼を食べながら思い出していた。もう、何年前だろう。あと少しで10年たつだろう。
小学生以来ほとんどあってないので、顔を見ただけでは誰かわからないだろう。みんな大人になっているのかなとしみじみ思う。
いつの間にか牛丼は食べ終わっていた。黙々と食べ進んでいたのであろう。俊は「こいつ、大丈夫なのか?」と言わんばかりの顔でこっちをみながら同じ様に牛丼を食べていた。
食べている途中に親子連れの家族が店内にやってきた。静まりかえっていた店内も子供のはしゃぐ声で少しずつにぎやかになっていった。
子供がはしゃぐのでその親は注意をする。子供は少しぐらいはしゃいでたほうがいい。そのほうが楽しいからだ。だが、場所はちゃんと選ばなきゃいけない。すき屋は大丈夫だろう。
ほとんど、店内にかかっているラジオでかき消されるから。あの音量は意外と大きい。スマホがなく何もすることがないので聞き入った。よくわからない質問ばかりだ。
内容は全く入ってこない。入ってくるのは永遠同じ男性の声だ。少し貫禄があるかんじの声だった。何か落ち着いて聞ける声だ。飲食店でラジオも悪くはないんじゃないのか。
この企画を考えた人はすごいなと思う。今までも会社に貢献してきたのであろう。これからもか。
七時になった。店内にある時計が動く。針もそうだが、からくり時計のようだ。真ん中が開くそんなからくり時計だ。
ユーモアがある。
店内に少しづつ人が入り始めた。僕たちは、あとがつっかえないようにとすぐに席を立った。レジへ行くと、若い男性が出てきた。店内には3人しかいないようだ。3人でとても頑張っている。掃除からレジ注文をうけドライブスルーまで対応している。汗でびっしょびしょになりそうだ。
お会計は税込み1980円だった。
高いのか安いのかはよくわからない。ファミレスよりは断然安いが。特盛と大盛りでは150円の値段が違う。中盛りと大盛りではどっちが得かはっきりしているが、特盛と大盛りではどっちが得なのかいまいちわからない。
カロリーは200ちょっとしか変わっていない。
大盛りでも十分量はあるのでいいとは思っている。中高生の時は特盛さえも余裕だった。なんなら裏メニューのキング牛丼も楽々食べられるのではないかと思ってたぐらいだ。
トン
肩をたたかれた。俊だ。少し、寂しそうにこっちを見ている。何か言いたそうだ。
「なんだよこっち見て。」
心のなかでは笑いながらも大きな声で言った。
「なにか悩み事でもあるんじゃないかなと思って、何にも喋んないし。」
「別になんにもなかったけど」
「いや、絶対なにかあっただろ。言えよ、俺たちの仲だろ。」
「うるせーな、何にもないって言ってんだろしつけ―んだよ。」
俊はしゅんとした。口を開きけていたがもう一回見ると閉じていた。少し悪いことをしたな。
どうやって謝ろうか考えながら駅に向かって早歩きをした。いい謝り方が思いつかず、駅に着いた。
僕は改札へ向かった。
「本屋いって帰るから、ばいばい」
怒りと寂しさが入り混じったような声で俊が言った。完全に謝り損ねた。今日か明日何か使って謝ろう。
すこし悪ふざけをしすぎてしまった。今回のは完全に自分に非がある。
でも、すぐ許してくれるだろう。俊のことだから。
今日はあまり電車に人がいない。めずらしく座席にすわることができた。曇っている窓ガラスを服の袖でふいた。すると外には見たことのない景色が広がっていた。
綺麗な夜景だ。パラパラと灯りがついている。一つ飛ばしな感じが好きだ。ついたり消えたり町の奥のほうも見えてしまう。
町の灯りに負けないくらい。空も光っている。今日も星はきれいだ。電車の中からでもこんな景色が見れるのか。初めて夜景をみた子供のようになっていた。
窓に反射した自分の目が見える。とてもキラキラしていた。こんな目をするのはいつぶりだろう。記憶にない。
ゆっくりとこの景色を堪能した。俊にみせてやりたい。写真を撮ろうとするもスマホがない。自分にあきれた。いつもう一回この景色がみれるかわからない。
周りの乗客もみんな写真をとっている。いつもこんな感じの景色をみれたらいいのに。心の底から思った。息でまた曇ってきた窓ガラスに指で落書きをした。
あと少しで完成するときに最寄り駅についた。いつもの3倍は早いんじゃないか?気のせいだとしてもいいモノを体験できた。
降りるときも自分で歩いた。ホームもこんなに広かったんだ。いつも人混みのところしか見たことのなかった僕は驚嘆した。
なぜ人が少ないのかはあまり疑問に思わなかった。たまたまいろんな人の事情が奇跡的に一致したのだろう。
電車の中から見えた景色を思い返しながら、家に向かった。なんかいもあの景色が頭の中をループしている。夜を散歩中のご老人に出会った。
すこし、電車の夜景の話をした。
彼は、あの人混みの電車の中にいるのは難しいそうだ。いくら優先席があったとしてもそこまでたどり着けない。
もっと、若く生まれてみたかったそんなことを言っていた。脳を共有できないのか一度でもいいから見せてやりたかった。
家の玄関をあける。少しドアノブが軽かった。僕はすぐさまスマホをさがした。
一件のラインが届いていた。昨日見なかったやつだ。
「若松奏」からだ。
「久ぶり、定期拾ってくれたありがとね。浜川くんとこんなところで会うなんて驚いたよ。」
少し素朴なメールだった。呼び方は昔からかわっていない。だけど名前を呼ばれるだけでうれしかった。
口角が上がった。どう返信しようか迷った。変なことを言って何かあったらどうしよう。そんなことを考えていた。
少し考えた末「僕もびっくりした。今はなにしてるの?」とだけ送った。なにを期待していたのか僕はスマホを片手にずっと持ち返信を待っていた。
スマホから口笛の音が鳴る。返信がきた。僕は急いでスマホの顔認証をパスし、ラインを開いた。
「俊」のところに1と書かれた赤い丸がある。心が跳ね上がった自分がはずかしい。内容は見ずに適当に返信をした。何を送ったかは知ったことではない。
その後、口笛の音は全くならなかった。鳴る気配すらなかった。僕はすこし落ち込んだ。自分が昨日返信すらしなかったのに何を言ってるのだ。心の右奥の端っこから声が聞こえた。
小さくひよわな声だたのにもかかわらず、ぼくの心にぐさりと刺さった。これはなかなか抜けないんじゃないか。早くとれてくれそう願うしか僕にはできない。
気が付いたら、2時を回っていた。やっぱり返信はない。寝れなく、ありとあらゆる投稿されていた動画を見ていたのでもう見るものがなくなった。
見る側もネタ切れになるんだな。面白い仕組みだ。
寝れそうにないのでスマホと懐中電灯をもって外に出た。僕は、スマホのライトをつけるのが嫌いだ。落としてしまいそうでいつもハラハラしてしまうからだ。
暗闇の中で持つ電子機器ほどこわいものがあるのか。そんなものをもっていたら46時中ヒアリハット体験のパレードになってしまう。
心臓に悪い過ぎる。なので外に出るときは手に必ず懐中電灯をもつ。
サンダルを履いて外に出た。大通りにでて、線路を横切り、少し歩くと海が見えてくる。きれいなのかどうかはわからない。
シーズンは終わってるので沢山クラゲがいそうだ。
目的地に着いた、四角のテトラポッドだ。あんまりこの形は見かけない。珍しい。僕はたまにここに来たりする。潮風がとてもきもちがいい。少し潤った冷たい風が僕の喉のなかに入る。ひんやりとてもいいものだ。
テトラには弱い波から強い波色々な波が来る。テトラを僕はいつも自分の心に置き換えている。弱く心を震わすものもあれば、とても強く心を降らしてくるものもある。
1波1波、とても重い波がテトラに当たる。その音は僕の心をも震わす。一回一回ぼくの心を痛めつけてくる。恋をしているが空回りしているとおんなじ感覚だ。
潮風と、波を感じながら僕は気長に返信を待った。
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