あなたが大切にしている時計は、どうやら壊れてしまったようです。

本編はこちら。


裏設定は以下になります。

 時計店の店主は、あなたの住む時計塔の守り人です。そしてあなたが持っていた時計は、時計塔の守り人にしか分からない刻印があり、それを見てあなたが不思議な体験をしたのではないかと問うたのです。
 この時計店の店主は少し変わった人です。普通は、時計塔に人を踏み入らせるのは、どの世界の時計塔の守り人もしないこと…。それを、時計に関して修理をしたり、唯一無二の時計を欲しいと思った人に店を視認させたりというのは、中々にリスクの高いものだからです。それでも、人と関わることが好きなこの時計店の店主は、とある方法でこの時計塔を守っています。
 それは、訪れた人の記憶を消すこと。一度訪れた人に対して、ここでどんなやり取りをしたかという記憶を消すのです。二度と訪れることはないというものではなく、ただ、そこで過ごした記憶を失うのです。聞き手であるあなたも、眠りについた後に目にする景色は、自室の天井と、机の上に置かれた腕時計と紙切れ。紙切れには、
「逢いたいのならば、竜頭を3度引くこと。手土産を渡すのなら、それを持って」
 と、何のことだかよく分からないことが書いてあります。しかし、何となく思い出されるのは、別の世界で出会った時計塔の彼。もしかしたら、この通りにすればもう一度会えるのかもしれない。でも、この手紙は…一体…?
 そんな疑問はすぐに消え、徐々にあなたはいつもと変わらぬ日常へと戻っていきます。

 この先あなたは、腕時計の竜頭を3度引くでしょう。いつか出会った、あの日の彼に会えると信じて。
 きっとこの手紙を書いてくれた、自分の知らない誰かに対して思い浮かぶ言葉の、ありがとう、という単語が頭の中に渦を巻きながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?