夏の香りは、癒しと共に。

本編はこちら。

以下、裏設定になります。

  話し手の彼は絶対に明かさないが、この川の守り神。パッと見普通の人であり、この川に訪れる人に危険がないように見守っている。ただ、多分次会った時にはボロが出そうなくらいには嘘をつくのが下手。そう遠くない未来できっと聞き手に見抜かれる。
 
  聞き手がこの川が好き、ここがいいといった時に妙に照れていたのは、川の守り神である彼にとって川を褒められるということは、人間にとってみれば容姿や性格を褒められているようなもの。だから嬉しそうに照れるのだ。
 
  そしてこの彼の見回りをしているというのは、本当。
 川というのは一見穏やかに見えて、怖い側面も持つ。人間は、川で事故が起きた時などに川の神様に魅入られたんだ、と言うことも多いが、何も神に限った話でもない。澱んだ想いは、人に仇為す。…そんな存在から人間を守るために、この彼は見回りを行うのだ。いつも必ず人の形をとっているわけではなく、人間が危ない事をしていれば人間の姿で、澱んだ想いが在れば神としてそれを打ち祓う。自分が守りしこの場所で、悲しいことが起きないように。
 
  最後に彼がくれたのは、彼の真の姿である龍神…その鱗の一片である。聞き手がもし何かの危険にさらされたとき、その呼び声に応じて彼は行く。助けんとするために。
 ただでさえ正体が分かってしまいそうなところ、それを彼が渡したと言うことは、余程この場所が好きだと言ってくれたことが嬉しかったのだろう。神は平等でいなくてはならないが、少しの感謝も込め渡すことに決めたようだ。
 きっとこの先、守り神の彼と聞き手であるあなたは、時々ではあるだろうが不思議な逢瀬を重ねる事であろう。
 少しだけ「あぁ、人間じゃないんだろうな…」と感じると同時に、とてもやさしい存在なのだろうな、と心の隅に思いながら。

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