世界とじぶん
小学6年生の時。
入院しているおばぁちゃんのお見舞いの帰り道。
夜空の下を走る車の中から、道路を走るたくさんの車の光を眺めていた。
同じ道を走っている、この車1台1台。
それぞれの人に、それぞれの人生があって、
今、この瞬間、全く違う感情を抱いているのだと気がついた。
同じ車に乗っている、運転席の父は
今、何を考えているのだろう。
その背中を見つめたが、わかるはずもない。
そして、きっと、父にも
後部座席でぼんやりと考え事をしている私の
考えていることなど、わかるはずもない。
世界と自分が離れた瞬間であり、
自分が世界の一部だと認識した瞬間である。
『君たちはどう生きるか』を読んでいて、
思い出したのが上記の出来事だった。
あの瞬間。私は、世界の中の自分のちっぽけさに気付いて、
小さな集合体が世界であることを知った。
世界が途轍もなく広く感じて、
自分が、とても無力に覚えた。
時は止まらずに進んでいく。
人は生まれて、死んでゆく。
人は、この世界に対して、何を抗えるのだろうか。
ちっぽけな私は、この世界をどう生きていくのだろう。
今でもたまに、辛いことがあると
高いところから街や人を見下ろしてみる。
世界の広さと自分のちっぽけさを自覚して
その無力さに、乾いた笑いが込み上げる。
それでもまた、自分がただしいと思うことを信じて、
この世界に期待して、人間の優しさに夢を見て、
私はより良い明日を目指して歩いてく。
大丈夫。まだ頑張れる
私は、この世界に何を残せるのだろう。
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