お礼のお礼のお礼
高校のとき、凄まじい美術センスをもつ同級生がいた。
彼女は文化祭で、クラスの美術監修を毎年のように手がけ、そのたびに非常に高い評価をうけた。
彼女さえいれば文化祭の賞レースで非常に有利になるので、先生方もきっとクラス替えで争奪戦したに違いない。
ドラフト会議方式ならきっと「第一巡選択希望選手」ならぬ「第一巡選択希望生徒」になっていたことだと思う。
彼女がデザインしたクラスポロシャツもまたセンスの塊だった。
いちクラスメートのわたしは、いまも思い出のアイテムとして大切に保管している。
多くのクラスメートたちが、彼女は将来大物になると予感していた。
だからよくいう「いまのうちにサインもらっておけ」みたいなのがリアルに存在した。
わたしはサインこそもらわなかったけど、病気で倒れたときに、粘土で作った手作りのストラップをいただいたことがある。
すっごくうれしかった。だけどそれと同時に、将来彼女が大物になったとき、『なんでも鑑定団』的なのに出せるなこれ…世界に1点しかないやつだし…!!と、しょうもない想像を膨らませてもいた。
先日、部屋の引き出しからそのストラップがキレイなまま発掘された。何年も経ってるのにいまだにまったく古びてなかったので、彼女にそのことと当時のお礼をしようと思って連絡をこころみた。
だけど、なんか様子がおかしい…。
なんだかイヤな予感がした。
もしやと思って、いわゆるLINEのブロック確認術みたいなのを試してみたら、その予感は当たった。
どうやらブロックされている。
え、なんで?うそでしょ?と疑問しかなかった。こればかりはほんとに心当たりがなさすぎて困惑した。
彼女とのあいだにはLINEしか連絡手段がなかった。そのため、あのときのお礼とストラップの現状報告はいまもできずにいる。
もしかしたら一生、話す機会がないかもしれない。相手がイヤがってる可能性があるのならなおさらだ。
お礼や感謝を伝えられないもどかしさと、その相手にいつの間にか拒絶されていた事実が絡みあって、二重にモヤモヤしている今日この頃。
ストラップに添えられたメッセージには、「写真のお礼」と書いてあった。情けないことにわたしは、その「お礼」がなんのことかも
思い出せない。
わたしなにかしたっけ…?
そうか、これが良くないのかもな。要するにお礼させっ放しだったってことだもんな。
わたしは結局、ふるさと納税の返礼品を食べたり使ったりせずに放置するのと同じような愚行をしていたのかもしれない。
でも、ほんとのところはどうなんだろう…?
無理やり確かめるべきことではないのはわかっているのだけど…。
どこかでがんばっていてほしい。
とりとめの無い書き殴りだけど、お礼のお礼のお礼を込めて。