『キラーストリート』へ足を踏み入れた日
わたしはサザンオールスターズおよび桑田佳祐の音楽が大好きだ。
気を抜くといくらでも語ってしまいそうなので、それをこらえるのが大変なくらい好きだ。
そんなサザンオールスターズの15枚目のアルバムであり、わたしが人生ではじめて買ったCDが、記事タイトルにある『キラーストリート』(通称『キラスト』)である。
『キラスト』は、サザン史上最大の収録曲数を誇り、その後の活動(および桑田佳祐自身)の転換点となったとも評される。
ただし、たとえどのように評されようが、わたしにとって『キラスト』には、サザンの世界へといざなってくれた思い出が詰まっていることに変わりはない。
ではなぜ、わたしが人生ではじめて買ったCDに『キラスト』を選んだのか。その経緯をじっくりと書いていきたい。
幼少期に親の運転する車のなかで『バラッド3』がヘビロテされていたこともあって、どこか子守唄のような感覚を持っていた。
そして2013年、当時中学生だったわたしは、サザンの活動再開にあたって発表された『栄光の男』をたまたま耳にし、その哀愁漂う歌詞に衝撃をうけた。
「これがサザン…?なんでこんな哀しそうなの…?」と。
そのときわたしははじめて、彼らのファンなのかもしれないと意識することになった。
しかし、中学生特有の謎の恥ずかしさもあって、好きであることを大っぴらにはしなかった。
実際、わたしの世代は他に比べて「サザンファン」がきわめて少ない。
それだけでなく、サザンや桑田佳祐の音楽は「懐メロ」扱いされている感さえある。
さらに(とても悲しいことに)「TSUNAMI」しか知らない、というケースも多い。
そんな状況下でなかなか好きを大っぴらにできずにいたわたしは、高校に入ってからふと、自宅ですっかり埃をかぶっていた『バラッド3』を手に取った。
そこには、当時メディアで飛び交う音楽とはまるで違う懐かしさに似た「なにか」が広がっていたように思えた…!
そしてYouTubeで公式がワンコーラスのみ公開しているMVを漁り、その「なにか」を味わおうとした。
でも、ワンコーラスじゃどうしてももの足りなかった。
また、当時はダウンロード配信されていなかったこともあって、CDを手に取ることでしか彼らにたどり着くことはできなかった。
そこでわたしは、なけなしの小遣いをもって地元の中古CD屋に向かった。そのときたまたま1枚だけ売られていた『キラスト』を迷わず購入して、家に帰って再生した。
1曲目の『からっぽのブルース』の歌い出しである、「曖昧 疚しい茫洋〜」というフレーズがいまも耳にこびりついている。
サザンがわたしの部屋から流れてくるようになったことで、いつの間にかわたしのサザン好きは家族公認のものとなっていた。
あるとき、母がわたしに言った。
あなたを出産するとき、サザンを部屋で流してもらってたの。
わたしの好きな音楽は、母のおなかにいた時点でもう決まっていたのかもしれない。
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