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自称投資家からの着信
いまよりずっと暑かった先週のこと。
お風呂あがりに触ったケータイが震えていた。手に取ってLINEの着信だと確認するも、誰からなのかわからなかった。
え、誰…?誰これ?誰なん…?
震え続けるケータイを前に考えるけど、イマイチ自信がない。もし大事なことならメッセージを送ってくると思って、ここはいったん電話は受け流すことにした。どうやら、いわゆる「非表示」にしている「友だち」が、いつの間にやらアカウント名を変えていたらしい。
わたしはLINEのアカウント名はそのひとの人間性や心的状態をあらわすと勝手に思っているので、基本的にひとのアカウント名を自分用にわかりやすくすることはしない。
今回、それが完全に裏目に出た格好だ。やられた。
翌日。その人物からメッセージがきた。
「間違えてかけた、ごめん」とあった。
間違えてかけた…?にしてはコール長すぎだろ…と思ったけど、まさかメッセージが来るとは思ってなかったので、返信をするべくこの人物の心当たりを探った。
心当たりはただひとつ。高校のときのクラス。
高校入りたての勢いでクラスメートを片っ端から友だち登録していたことがあったからだ。はじめてのケータイだったしうれしかったんでしょう、きっと。
あのときわたしは若かった…。
トーク履歴をあさったら、その人物のメッセージを見つけた。それまでモヤがかかっていた像が急に結ばれた。なんかスカッとした。
会話自体も5年以上交わしてないという微妙な距離感。おそるおそる返信した。
当たり障りのないやりとりが続いた。
「○○(わたしの下の名前)はいまどうしてんの?」
と聞かれた。でも違和感しかなかった。
わたしは基本的にあだ名で呼ばれることばかりで、下の名前を把握しているひとは極めて少ない。普通に生きてたらわたしの下の名前なんて知る機会がまずない。LINEのアカウント名も使用頻度が高い2つのあだ名を掛けあわせたものになってるし。
にもかかわらず、5年以上会話していないいっときのクラスメートが知っているなんてふしぎな話だ。
ただ単に向こうがフルネームで登録しているのかもしれないと思うことにして、自分のことを正直に話して、相手にいまなにしてるのかも尋ねた。
返信がきた。
曰く「投資家」をやっているらしい。
いぶかしんだわたしは、詳しく聞き返した。だけどそれ以降返信は途絶えた。
あー、これあれだ、あれだよたぶん。
なんかの勧誘か金の無心的なやつだ。昔のクラス名簿を見て電話をかけてみたものの、いまのわたしが金銭的余裕のある立場にないと見るや手を引いた、きっとそうだ。
人間関係を疑心暗鬼にみて、物象化して考えたくないのだけれど、こうみるといろいろ合点がいった。
一応、わずかな手がかりをもとに他のSNSアカウントを探してみた。案外すぐに見つかったのだけど、そこには、怪しげなことばと、「気軽にDM」と書かれたプロフィール、そして謎の投稿がいくつか。
あっ…これは…。
いっそいまの状況を偽って、おとなしく勧誘されてみたらおもしろかったかもな。
笑い話にするつもりで書いたのに、妙に虚しさが残ってる。うーん。
なんでかなぁ…。
※画像は映画『ファイト・クラブ』より。ブラッドピット演じるタイラ・ダーデンが主人公を勧誘、説得するシーン。