その概念、既出ですか？の話

地味に一年ほど続けている趣味がある。

印象に残った風景をスマホで撮るときに、自分の無表情の顔面を半分見切れさせるというものだ。
想像がしづらいと思うので、イメージイラストを描いたので貼っておきます。

こんな感じで見切れさせる

夫や友達に画像を送るときに自分が見切れてたら面白いかな、
という些細な遊び心から生まれたこの趣味を、
「半顔面（はんがんめん）」と呼び地味に継続していた。

実際、「半顔面やってるんだよね」と画像フォルダを見せると結構な確率でウケた。
気をよくした私は現在20歳そこそこ、現役バリバリのZ世代のいとこに「いま半顔面にハマっててさ」と見せた。

画像を一瞥していとこは言った。

「『片目界隈』ですか？？」

え。
なんて？？？

「そうやって顔の半分だけの自撮りを載せるやつ、『片目界隈』っていうんですよ」

名前が付いてんの？すでに？これに？
これは半顔面じゃなくて、片目界隈なの？？？

すぐさまTwitter（X）で検索すると、
「＃片目界隈」
「＃片目界隈と繋がりたい」
などというハッシュタグと一緒にちょっとかっこいい感じの半顔面の画像がいっぱい出てきた。
つながる…？よくわからないけれど…。

さらにWebで検索すると「片目界隈　痛い」とまでサジェストされるではないか！
どうやら片目だけの自撮りを載せることで、身バレを防ぎつつ自分の顔をアピールして承認欲求を満たそうとしている…というのを感じて嫌悪感を覚える人もいるようだ。
さりとて実際に片目界隈を自称するひとたちがどういう動機でやっているのかどうかは、よくわからなかった。

いやいや…半顔面はたぶんその文脈じゃないんだよ！
半顔面は背景がメインだし、承認欲求を満たそうというつもりもないんだ！
なんか既出ってことになってるけど！違うんだよ！

いとこは続ける。

「大丈夫ですよ！片目界隈痛くないですよ！ビーリアでもやってる人いるし！」

ビーリア？ああ、若者の間で流行ってるビーリアルね？なんかリアルタイムでこう…撮るアプリね？フォローまで今どきでおばちゃんはオヨヨ。

ふとした思いつきで始めた趣味が、「界隈」という言葉で吸収されていくのは上手く言えないけど虚しく悲しいことのように思えた。

今でも片目界隈…ではなく、半顔面としてこの趣味はひそかに続けている。
なんだかんだで楽しいから、ただドメスティックにやるだけである。

直接会った人には画像を見せる機会もあるかもしれないので、そのときにはまあ笑ってやってください。
なんなら自分でもやってみてください。結構おもしろいよ。