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留学前にすべき、たった1つのこと。

ケム(Cam)川の流れをゆっくりと進む。快晴の元、夕暮れの街で楽しむケム川は格別だ。

このアクティビティは、日本流にいえば何だろう。

屋形船ではない。笹舟のように心細く、不安定だ。ラフティングでもない。川の流れは、肉眼では視認できない程穏やかだ。船の形状でいえば「川渡し」と言ったところ。しかし、川を渡るわけでもない。オールの形状も、漕ぎ方も全く違う。結局「パンティング」と標記する他ない。「なぜ、パンティングをするんですか?」等とせわしく質問して、また1つ異国の文化を学んでいく。

Cambridgeとは、ケム(Cam)川にかかる橋(bridge)という意味だ。気持ち良いくらい捻りがない。まぁ、そんなことを言う権利もまた無いのだが。日本にも「両替をしていたから"銀座"」とか、安直な地名がゴマンとある。いわんや人名をや。そんな当たり前のことに、異国の地ではっとする。

外国人とコミュニケーションをとると、「当たり前」のことを聞かれる。

「なぜ時間を守るの?」「なぜ、エアコンを使うの?」「なぜ、プラスチックを使うの?」「なぜ、暑いのにスーツを着るの?」「水道水飲む?」「なぜ、転職しないの?」「毎日寿司食べてる?」「なぜ、ビールをキンキンに冷やすの?」「毎朝何を食べている?」「なぜ、電子辞書を使うの?」「元号って何?」「なぜ、皆が一斉に就職活動をするの?」「なぜ、学部の授業と、今の仕事が違うの?」「なぜ、Whats App使ってないの?」「なぜ、肉を食べるの?」「なぜ、日本の技術や教育水準は高いの?」「なぜ、日本人は英語が話せないの?」…

当たり前だ。当たり前でないのだから。私たちにとっての当たり前は、彼らの目に奇異に映る。それを共有することが、語学それ自体よりも重要な何かを掴む鍵だと思う。少なくとも、私にとっては。

冒頭の問いの答えは、「日本を知る」ことである。BBCを聞いたり、語彙力を高めたりすることではない。日本とは何か、日本人とは何か、どのような風習を、いつどこでどのように何故行い、何を食べ、どういう歴史によって、どのような価値観を持つのか。私は何者で、何ができ、何ができず、何が好きで、何が苦手で、何をしたく、何をしたくないのか。そういうことを知ることである。私たちは、思う以上に日本に関心が無い。

日本の話題になると、私は先生から「先生」と呼ばれる。私たちがよく知らない日本を、彼らは私たち以上に知らないからだ。「"令和"とはどういう意味ですか?」そんな素朴な疑問に答える鍵を持ち、国境を阻む硬いドアを開けられるか否か。最も重要なことは、そういうことだ。

明日は、イギリス人の若い先生の元、エールビールについて学ぶことにしよう。手始めに「なぜ温いビールを飲むのですか」等と聞いてみたいものだ。

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nemutai
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