南米冒険記。~ボリビア④~
南米冒険記。~ボリビア①~(4,000mからのスタート)
南米冒険記。~ボリビア②~(食事とお腹とバス)
南米冒険記。~ボリビア③~(再会)
「ザップン。」
ここが海なら。車体は塩水に浸かり、あっけなくスクラップ行きなのだが。ツアー用ジープは、モーセのように「道」を作るでもなく、大胆に塩水をかき分けていく。白色(ちょっと茶色)の地面に薄く広がる水。湖のほとりでも “らしき” ものは見えるが、うーん。何というか期待したほどではない。
10分程進む。水辺はもう遥か彼方だ。事前に調べた情報では、新潟県ほどの広さがあるそうだ。乾季は真っ白な塩が露出し、雨期は断続的なスコールによって、その上に数十センチの薄い透明な膜が張る。道標になりそうなものは無い。慣れたドライバーでなければ遭難してもおかしくない雰囲気だ。
そんなことを構わずに、どんどんスピードを上げる車。車内は窓全開で、風がとにかく心地いい。不慣れなスペイン語を練習したり、人工的に積みあがった塩を眺めたり、身を乗り出したりしながら、徐々に確実に、待ち望んだあの景色に近づいていく。日本を出発して何十時間経っただろう。ついにここまで来た。
ウユニ塩湖。短い雨期の間だけ広がる、幻の鏡。日本一の高さに世界一の平坦が広がる不思議。身体は、まとわりつく塩分を少しでも押し返そうと、吐強烈な太陽光のもと白い結晶を量産する。
ドライバーのハビエルが、ゴソゴソと何かを準備している。何だろう。湖の中で思い思い遊びに興じていると、大きな声で僕たちを読んでいる。どうやら昼食の準備が整ったようだ。
塩湖の中心でとる食事。この旅を通して、初めて「おいしい」と感じられた。料理そのものも良かったけれど、やはり景色と開放感ゆえなのだろう。一緒にツアーを申し込んだ日本人2名を加え、7名でワンピース風の写真を撮る。
写真。ここまで来たからには、定番のアレをやらなくてはならない。食事が終わると、天気の良いうちにいそいそと配置につく。地球の裏側に、日本人7人で描く鏡文字。
(固い身体で必死に"J"をこなす僕)
さて、そろそろ戻る時間だ。
その日の宿泊場所は、湖のほとりの「塩」のホテル。ホテルの大部分が塩でできている。(湖の中心部にも塩のホテルがあるのだが、インフラ面でいかんせん不便。)ホテルは快適そのものだ。三次元全てがNaClで構成される空間において、温水で塩を洗い流す奇跡を受け止めきれない。
(塩のベッドで寝る友人)
シャワーを浴びて身体中の塩を落とせば、ここがどれほど過酷な環境か改めてわかる。
(日本産SPF50++++を重ね塗りしても、半日でこんな状態に…)
(塩まみれのサンダル)
まだ何事も成し遂げていない若者たちが、自分たちの足でここに立っている。その事実だけで、何だか自分たちが誇らしい。
1か月後には社会人だ。その前に、一足早く、大人の世界に足を踏み入れたような気がする。快適なホテルで、能天気にそんなことを考えている。
しかし、ここは塩の街ウユニ。このまま旅が終るほど甘くない。静かに忍び寄る”戦”の気配を、僕たちはまだ感じ取れずにいた。
何かのお役に立ちましたなら幸いです。気が向きましたら、一杯の缶コーヒー代を。(let's nemutai 覚まし…!)