南米冒険記。～ボリビア⑤～

南米冒険記。～ボリビア①～（4,000mからのスタート）
南米冒険記。～ボリビア②～（食事とお腹とバス）
南米冒険記。～ボリビア③～（再会）
南米冒険記。～ボリビア④～（JAPANと塩のホテル）

南米の旅も後半戦に差し掛かっている。

塩湖ツアーは若さとテンションで乗り切ったものの、肝心の体調は全く変わっていない。いったい何なのだろう。最近では身体の変調のサインも前もって感じ取れるようになり、トイレに慌てることも少なくなった。熱の具合も変わらないので、常備薬もバックパックの奥底にしまい込んでしまった。

幸い動けないほどではない。ボリビアの後には、この旅もう１つの楽しみ、ペルーのマチュピチュが控えている。何とかウユニの街に戻り、ラパス行きのバスに乗らなくてはならない。このまま塩のベッドに横たわり続けたいが、身支度もそこそこにホテルを後にする。（温水シャワーの堪能を忘れない。）

2日ぶりの小さな街。あの再会が遠い昔のようだ。

濃縮された時間すら、赤い肌から搾り出てきそうだ。次に来るのはいつだろう。移動時間用に持参した小説の残りページも1/4ほど。『壬生義士伝』なんて気軽に勧めてくる博識な同期達に、はたして僕はついてゆけるのか。そんなことをぼんやりと考えていたら、いつの間にか街に戻っていた。

バスまでの待ち時間、もう来ることも無い街をブラブラ練り歩く。昼過ぎだからだろう、今日は露店が多い。子供用のおもちゃがたくさん売られている。結構いいクオリティじゃない。そんなことを話しながら、街の中心部に向かって歩みを進める。

「ピシャン。」

突然、地面に何かが弾けた。ゆっくりと背後に目をやると、そこだけ黒く、50cmほどの沁みになっている。今日は突き抜けるような青空。雨が降る時間ではない。

「ピシャン。」

まただ。一体何だろう。訝しく思いながら歩いていると、いつのまにかＴシャツの一部がじんわりと濡れている。どうもおかしい。ゆっくりと空を見る。

少年2人と目があう。大きな目が、にんまりと笑っている。注意深く辺りを見渡す。同じような子供が1人、2人、3人、多数。続いて行商人の扱う商品に目をやる。水鉄砲に水風船に、怪しげなスプレー。やたらと偏ったラインナップだ。ああ、とんでもない時期に来てしまった。

露店.mp4

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（↑少しうるさいですが、現地で撮影した動画です）

2月下旬。ウユニから数百キロ離れた町で、かつて「1週間踊り狂った」といわれる祭りが今に息衝いている。南米三大カーニバルの1つ、オルーロのカーニバル。ここウユニの街もその熱風の余波を受けている。

wifiを探す必要は無い。検索しなくても分かる。スペイン語すら不要だ。“誰にでも水をかけていい”というシンプルな掟。ボリビアのカーニバルに、観光客、老若男女、例外などない。

そうと決まれば。指示語で、店主とコミュニケーションを図る。

「これと、これ。それから、これも。」

よし、悪くない。

シャワーを浴びたばかり。勿論それもあるが。先に「ボリビアの洗礼」を浴びた日本人女性が二人。着いたばかりなのか帰る所か。そこは問題ではない。旅の想い出、楽しいカーニバルに、涙は似合わない。

幸い、帰りのバスが出発するまで、時間はたっぷりとある。弔い合戦といこうじゃないの。老若男女、例外など無いのだ。大人の厳しさをたっぷりと味わっていただこう。

先ほど大人買いした「バカでかい水鉄砲」を握る手に、自然と力が入る。