男になりたいと思った時
私はトランスジェンダーではない。それだけは最初に言っておきたい。女子力が高いか...と言われればYESとは答えられないが、制服のスカートに疑問は持たず、長い髪を毎朝結ぶ、そんな普通の女の子だ。その辺によく歩いているような地味目の女子高生、周りの人からはそんなふうに見えているのかな。
ただ、「男になりたい」と、時々思うのだ。
私はいわゆるオタクだ。といっても、オタクにも色々種類がある。アニオタ、ジャニオタ、鉄オタ...
私は可愛い女の子が出てくる深夜アニメやゲームが好きだ。Twitterの趣味垢で趣味が近い人と話したり、推しの可愛さを語ったりする。
そして、その相手は男性であることが多い。
長らく界隈で過ごしているうちに、いつメンと言えるような仲良しの友達もでき、数人でオフ会をしてカラオケだとかゲーセンだとかごはんにも行くことがある。
ただ、ほとんどの場合、女は私1人だ。
あの場では、女であることがマイノリティなのだ。
例えば、みんなで1つの画面を見ようとした時。背が高いとは言えない私はどう頑張ったって埋もれてしまう。後は、ごはんを食べる時。私は周りの女の子に比べたらどちらかといえば食べる方だと思うけれど、男子高校生と比べられると途端に少食になってしまう。大盛りなんて食べられないし、ラーメンにライスは付けられない。
1度だけ、オフ会でごはんに行った時に残してしまったことがある。量の多いお店だった。食べるお店はいつも遊んでいる最中に成り行きで決まることが多く、前情報なんてなかった。いざ出されてみるとかなり量が多く、食べきれなかった。
残したい訳じゃない。出されたものは全部食べるのが礼儀だと思っている。知っていたら少なめの量にしてもらうか、他のお店を提案することだってできたのに。
男であることがあの場において「普通」だから、私は男になりたいと思うのだ。
別に女の子だから、という理由でお姫様みたいにチヤホヤされたい訳じゃない。でも男女の身体的な差というのはどうしてもある。みんなが私に合わせろとは言えない。ただでさえ気の弱い私は10人の中の他の9人に「私に合わせて!」なんて言えるわけがない。でも、せめて配慮はしてほしいものだ。
そして、この、「マイノリティに対する配慮」って、どこにでも必要な事だと思う。
私は地味目なその辺によくいる女子高生だ、と最初に書いた。その辺によくいるようなわたし、それでもマイノリティになりうる。
人はひとりひとり違うし、誰だって何かしらのグループに放り込まれたらマイノリティになる。けど、そんな少しずつ違うひとりひとりの個性を、大事にできる世の中だったらいいなぁと私は思う。