最低で最悪な忘れたくない思い出たちよ。
夜になると、ふと思い出すのはいつも決まって
元彼のことだ。
去年の12月に別れてしまった元彼のことを、
もうすぐ8月になるというのに未だに思い出す。
彼との日々は、特別なことは特になかった。
週に2~3回彼が大学終わりに、
私の家に泊まりに来て、一緒に二郎系ラーメンをたらふく食べる。2人で通いすぎて、ラーメン屋の店主さんに顔を覚えられて、常連しか貰えないおまけの卵も貰えるようになった。ラーメンを食べたあとは決まって、スーパーに足を運んだ。お腹いっぱいのくせに、夜食にお菓子と炭酸のジュースを買って、家までの道を2人で歩いた。
夜、彼がtiktokを見ながらゴロゴロしてるその横で私も横になる。2人で「これ面白い」だとか、「これは怖い」だとか他愛もないことを話して、お菓子をつまむ。そんなありふれた何ともない日々がたまらなく愛おしかった。特別なことといえば、数ヶ月に一回、記念日デートにも行くことだ。2人ともお金が無いくせに、大好きな古着屋巡りによく出かけた。原宿、町田、立川、八王子、下北沢、横浜、どこに行っても古着屋だけは必ずチェックしていたっけ。
平坦で単調でなんともない日々が、凄く幸せだと私は感じていたけど、彼にはそれはつまらなかったんじゃないかなと今では思う。
付き合って4~5ヶ月経った頃、彼は新しいサークルに入ると言って軽音サークルに入った。そこでの日々は、彼にとってとても充実していたと思う。新しく出来た彼の友達たちは少しヤンチャで、タバコ、ギャンブル、女に酒。元々彼も少しヤンチャだったけど、どっぷり染まっていった。
増える飲み会は、朝まで行われることもしばしば。私とのお泊まりを抜けて、宅飲みに行くことも増えたし、私は私でどんどん不安になっていった。
彼の周りにチラつく女。
口出ししても、「後輩だから、」と返されるばかりで真剣に取り持ってくれなかった。不安になればなるほど、頭が混乱して上手く言葉が出なくなった。喉元につっかかった言葉は、吐き出せずに飲み込んでばかりいた。そうして我慢に我慢を重ね、ある日プツンと切れて、ぶつけた気持ちは止まることを知らずに、言わなくていいことも言ってしまった。
別れる1か月前は、気づけば喧嘩ばかりになっていた。そんな日々に疲弊していたのは、彼だけじゃなく私もだった。今思い返すと、別れて正解だったと思う。あの時の私はどうかしていたし、彼も彼でもう私の事を考えるより、自分の楽しさを優先していたからだ。
それでも、思い出って言うものは怖いもので、美化されるし、綺麗なフィルターだってかかる。幸せなことばかり思い出しては、あの時は良かったなぁなんて思ってしまう。彼との思い出を早く消したい、忘れたいと思うけれど、忘れたくないなとも思う。
いつか完全に忘れてしまって、彼のことを他人事のように思う日が来るのかもしれない。そんな日が来ることをちょっぴり悲しく思う。誰よりもそばにいて、誰よりも身近な存在だったのに、忘れてしまえば1番遠い存在になってしまう。あの時は、彼に何があっても助けようという気持ちでいたのに。例え、借金まみれになったとしても、私が稼いで助けてやれたらなんて思うほど、好きだった。そんな気持ちが今では薄らいで、彼にいきなり呼ばれたとしても行くかどうかさえ危うい。
こうして忘れていく。
でもこんな最低で最悪で幸せだった思い出たちを、まだ少しだけ抱えて生きていきたい。
消えないで、とは言わないけど
もう少しだけ覚えていたい。
そんな気持ち。