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お話を子どもとたのしむ Vol.16 「てぶくろ」を語る

福音館書店『てぶくろ』

 毎月、ストーリーテリングのお話会をしているトワイライトスクール(名古屋市が各小学校に設置している放課後児童クラブ)、今月のプログラムは以下の3話でした。

-てぶくろ(ウクライナの昔話)同名絵本(福音館書店)より
-北風に会いにいった少年(ノルウェーの昔話)『おはなしのろうそく13』(東京子ども図書館)より
-かざじぞう(日本の昔話)同名絵本(福音館書店)より

 今回の聞き手は1年生15人。密にならないよう、長机に二人ずつと決められて座っています。
 私は「てぶくろ」を語りました。この話は上掲した絵本があまりにも有名ですし、とてもいい絵本なので、お話(ストーリーテリング)で語るより絵本を見せた方がいいんじゃないか、という意見を聞いたこともあります。それでもあえてお話だけで語るのは、私自身が、語りだけで聞いたときに、びっくりするような体験をしたからです。
 数年前のこと、下澤いづみさんがこのお話をストーリーテリングで語ってくださるのを聞いたとき、私の目の前に、絵本にあるミトンではなく、五本指の軍手みたいな手袋が浮かんできました。そして、その指の一本ずつに動物たちが入っていく。だから、いのししが「わたしもいれてくれ」といったときに「さあ、こまりました」となったのが妙に納得できたのでした。熊がぱきぱきと小枝を踏んでやってくる森は、絵本のような雪景色ではありません。まだ雪が降る前の落ち葉や枯れ枝がつもった晩秋の森です。絵本の「てぶくろ」に長く愛着を持って親しんできたし、子どもたちにも何度も読み聞かせてもきたのに、ことばだけできくと、絵本の絵とは別のイメージがちゃんと浮かんでくるんだということに驚いたのでした。
 さて、今回のお話会では、いちばん前にすわって聞いていた男の子が、うさぎがてぶくろに入ったあたりで、「あと二匹」と言うのが聞こえてきました。そして、きつねのときには「あと一匹」、おおかみが入ったあとでは「もう入れん」と言うのです。彼の頭の中には、五本指のてぶくろがイメージされていたんですね。
 おはなしが全部おわったあとでお話の出典本を見せますが、「てぶくろ」の絵本を見せたときには、その男の子も含めてほとんどの子が「知ってる〜」と叫び、中には「持ってる!」と言った子もいました。それでも、語りだけの「てぶくろ」を、子どもたちが自分の想像力を働かせながら楽しんでくれたことが実感できるお話会でした。
 絵本には絵を味わい楽しむよさがあり、お話には、聞き手が自由にイメージできるよさがある。そのことをあらためて思いつつ、いろいろなお話を耳で聞く楽しさを子どもたちといっしょに味わいたいと思っています。

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