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お話を子どもとたのしむVol.17 お話は早送りできません


文中の孫娘ではありません

ババ仰天!1歳児が「早送り」要求

1歳5ヶ月になる孫娘、最近ようやく「バイバイ」「よっこいしょ」「うまーい」などの片言が出るようになりました。先日、その孫娘と留守番をしていたときのことです。おもちゃ遊びに飽きたのか、テレビのリモコンを私に手渡して「見せろ」アピール。そこで、「いないないばあ」の録画をつけてやると喜んで見始めました。お気に入りの歌ではテレビの中のわんわんといっしょに踊ってご機嫌。ところが、その歌が終わってしばらくすると画面に向かって「バイバイ」と言います。消してくれということかと理解してテレビを消すと、不満気に「つけろ」アピール。
そこで、ババは考えた ー消すのではないとすると、この場面を飛ばせということかー 試しに早送りして、つぎの「踊れる曲」まで飛ばしてやるとビンゴ!またご機嫌で踊り出したのです。
なんと、1歳5ヶ月にして録画の早送り機能を理解し、自分が使える数少ない言葉の中から「バイバイ」をチョイスして、ババに指示を出すとは、恐るべし!

早送りで失うもの

ご機嫌で踊る孫娘を見ながら考えました。
私が子育てをしていたころは、VHSこそありましたが、子どもたちはまだリアルタイムで番組を見ていました。見たい番組が月曜日の夜7時なら、月曜日はその時間を楽しみに、晩御飯を早くすませたりしたものです。コマーシャルを飛ばすこともありませんし、歌番組なら、好きな歌が流れるのを今か今かと待ちました。
今のように、いつでも好きな番組を見ることができるばかりか、好きな場面を繰り返し見たり、そうでない場面は飛ばすことができるのは、確かに便利です。
でも、その便利さと引き換えに失ったものがあるんじゃないだろうか…。
早送りすることでなにか大切なものを見落としてしまったかも…。
ここ数年、1年生のお話会などで、前にはよく聞いた「おおかみと七ひきのこやぎ」が長すぎて楽しめない子がいるような印象を持っていたのですが、もしかしたら、世の中の「早送り文化」が関係しているのかも…。

お話は早送りできません

お話には始まりがあって、できごとが順を追って展開してクライマックスにいたり、結末を迎えます。登場人物と一緒に、はじめからおわりまで歩いてはじめて、物語からよろこびをもらえます。「早送り」では、物語の中で登場人物と一緒にその人生を経験することができません。
森へ出かけていくおかあさんヤギの言いつけをきいて、オオカミの見分け方を知り、やってきた悪者を2回まではオオカミだと見破ったのに、3回目で騙されてしまう。その悔しさや怖さを経験してこそ、オオカミのおなかから出てきたとき、おかあさんヤギに飛びついてぴょんぴょん跳ねるこやぎたちに共感できるし、オオカミが井戸に落ちて死ぬのを喜べるのです。いきなりクライマックスに飛んでも、怖さで興奮はするかもしれませんが、よろこびを味わうことはできません。

1歳から「早送り」を知ってしまった孫娘、そして、おそらく同じように便利な機能を使いこなしている今の子どもたちにこそ、早送り一切なしのお話を聞いてほしい、そして、物語から喜びをいっぱい受け取って大きくなっていってほしいと切に願います。


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