#25.認めてほしい
介護生活は大変だ。特に娘はよく介護者になり得ることが多く『母の介護が大変なのよ』という言葉を耳にする。
買い物から部屋の掃除、調理などいくら時間があっても足りやしない。繰り返しの毎日に疲弊している。
さて、いつものように娘が仕事から帰り、買い物袋から買ってきたものを冷蔵庫に入れている。その後はすぐにご飯を作り、お母さんを起こして二人で食事。入浴はお母さん一人でできる。このお母さんは介護度が低く身の回りのことは大抵一人でできる。
日常の会話は大概が娘の苦労話。
『今日もバイトの子が休んで私が行かなくちゃいけないのよ。』
『立ちっぱなしの仕事で腰が痛いのよね』
お母さんは静かにニコニコしながら娘の話を聞いている。傍から見ると娘も大変だと見えることもある。しかし、娘がやっていることはおそらくお母さんがいなかったとしてもやらなければいけないことがほとんど。強いて言えば二人分の食事を作るのが一人分に減るくらい。
たしかに、布団のシーツを取り替えたり、二人分の洗濯、食器を洗うなど仕事量は増えるかもしれないが仕事量はそれほど変わらない。
介護の怖いところは閉鎖的であり、誰にも仕事量が見えず、報酬ももらえない。お疲れ様の一言も貰えない。
まるで呼吸をするかのように"やることが当たり前"になっている。娘の本心は介護が辛いのではなく、誰かに認めてほしい、ただそれだけ。
そんなときお母さんがポツリと
『いつもありがとうね』
娘は目を合わさず小さく微笑んだ。
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