【写真展「NIMBY」】


またひとつ、展示を終えた。

写真展「NIMBY」。
初めは、社会学から突然写真展に持ってこられて居心地悪そうにしていた"NIMBY" という言葉も、今は堂々とそこにいる。

一言で言えば、これまでで1番意味を考えた展示だった。
必要性は認めるけれど、自らの近くにはあって欲しくないもの、それが「Not in my backyard」つまり"NIMBY"。

社会学で物事を考えるときには、個人的にみえる事柄をどう「社会」のなかに置くか、考えることが多いけれど、今回もその点はすごく悩んだ。

共感を得ることができるか?
切り取る場面はただの「嫌なこと」ではないか?
等々。

これってあてはまるかな?こういう構想で、こう撮影したら伝わるかな?とそこまで考えて、
また考え直して、いつも必要なことではないか... と、途中まで描いた下書きをぐしゃぐしゃにして捨てるような日々が続いて。

言葉と向き合っているうちに、ほんとうにそういった思いを抱えて生きている人たちのことが頭をよぎり、思いがけず涙を流した日もある。
だからこそ、現実をありのままに切り取ることはできなかった。

わたしは、多くの人に共感してもらえるシーンをフィクションで再現する方法をとった。逆に言えば、それしかできなかった。

「夕刻、雲居」
「I thought...」
「Not for me」

どれも刺激に欠ける作品だったと思う。
当たり障りがなくて、言葉さえあればなんとか理解はできるけれど、強烈な印象を残したりイメージだけで語ったりすることはできない。
他の人と切り取り方が少しずれていたのは幸いだったけれど、わたしの弱さが如実に現れた作品になってしまった悔いは残っている。

しかし来場者の方や出展者の方が、あらゆる言葉と感性で受け取ってくれたことが何よりありがたいことだった。
いつもこうして、弱さを補ってもらいながらなんとか写真を撮っているのだと実感する。

今後展示の機会は減っていくけれど、こうやって大真面目に向き合うのも醍醐味だなあなんて呑気に考えた、3ヶ月。

moca

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