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Xで晒し行為が禁止に! "有名税"は犯罪者の言い訳。メタバース住人が考える未来のネットリテラシー【X解説記事】
2024年3月、X(旧Twitter)がポリシー更新により「晒し行為」を明示的に禁止しました。個人的にはこれで大問題になっていたVTuberへの晒し行為が無くなるといいなと思っています。
Xでこの件について詳しく解説したところ、7,000リポストを超える大きな反響があり、多数のまとめサイトなどにも掲載されました。イーロン・マスクにしてはよい改定だとネットでは好意的な意見が多いようです(笑)。
この記事では、そもそも晒し行為がなぜ問題なのか、今回なぜポリシー改定が必要になったのか、イーロン・マスクの見解や、なぜネット言論は過激化してしまうのかメタバース住人の視点から考察し、みなさんから頂いた感想と共にまとめました。
Xが実名を明らかにしていないユーザーの実名や写真を晒すことを明示的に禁止
2024年3月、Xが「個人情報と晒し行為に関するポリシー」を更新し、「実名を明らかにしていないユーザーの実名や写真を晒すことを明示的に禁止」しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1711682118406-mxOByYR92c.png?width=1200)
※出典:X's private information policy and doxxing
【X速報】
— バーチャル美少女ねむ/Nem⚡Forbes JAPANインタビュー掲載中 (@nemchan_nel) March 26, 2024
Xが「個人情報と晒し行為に関するポリシー」を更新、「実名を明らかにしていないユーザーの実名や写真を晒すことを明示的に禁止」しました! VTuberへの晒し行為無くなるといいですね
X's private information policy and doxxing https://t.co/xXrJFJewPE ※添付はGoogle翻訳 pic.twitter.com/GtnBIYOnez
本件の発端とイーロン・マスクの見解
今回の措置は漫画家Stonetoss氏が炎上し実名が晒されていた件に対応する為のものと見られています。Xで炎上していたStonetoss氏は実名などの個人情報を晒され、晒していたアカウントが多数凍結されるなど、英語圏では大きな問題になっていました。イーロン・マスクのコメントはこちらです。
イーロン・マスクの見解(※ねむによる意訳)
「このプラットフォーム(X)では、匿名を保ちたいユーザーの権利を守るために最大限のことをする。そうしなければ、人々は雇用主から発言について迫害を受けたり、現実での暴力の危険などに晒されてしまうだろう」
原文:
This platform will do whatever it takes to protect the rights of users to remain anonymous, as they would otherwise face persecution from employers (as many have) or risk of physical harm
This platform will do whatever it takes to protect the rights of users to remain anonymous, as they would otherwise face persecution from employers (as many have) or risk of physical harm
— Elon Musk (@elonmusk) March 22, 2024
正直、実名上等のイーロンがこのような発言をするのは意外でした。世界的に影響力をもつイーロンが匿名性を権利として守るべきだと発言したのは大きな後押しになるのではないでしょうか。
晒し行為や誹謗中傷はそもそも犯罪行為
念の為に言っておくと、本人が公開していない個人情報を晒すのはXのポリシーに関係なく元々プライバシー権の侵害であり犯罪行為です。ただし実際問題防げない現実があり、何の罪もないVTuberが晒されて炎上する事件もたびたび起こっていました。仮想のキャラクターとして活動するVTuberにとって晒し行為は死活問題です。これで活動を停止してしまった人も数知れません。ガイドラインが明文化され処罰や削除対応が早くなるのはいいことだと私は思います。
またこれも当たり前ですが一応言っておくと、匿名が担保されるからといって何をしてもよいという訳ではありません。例えば、誹謗中傷などは犯罪行為なので開示請求や法的処罰の対象になる場合があります。当然ながらそういった犯罪行為は今回のポリシー変更でも守られません。
これは素晴らしいポリシー改訂だと思う
— ブリッツァ(●ー●)/Ryo (@BLITZforrize) March 26, 2024
晒し系インフルエンサーの被害にあって自殺した人とかいるし大切な事だと思う https://t.co/wFLMlanP1x
これは一歩前進だとは思うけど、こういう晒し行為を平気でやる垢って、垢バン上等で何度でも復活する気がするので、早くプライバシー侵害を刑事罰として処理するようになってほしいのよね。 https://t.co/LYxrkCHLol
— ヤマダ (@yamada_sier) March 27, 2024
「これでは迷惑行為に対する特定班の活動ができなってしまう」というコメントもいくつか見られましたが、迷惑な人相手であれば犯罪行為をしていいという発想が根本的に間違っています。
迷惑行為の特定班が活動しにくく(・ω・)
— Fai-Sakila@ヒト型ネコVTuber (@faisakila) March 26, 2024
迷惑な人相手であれば犯罪行為をしていいという発想が根本的に間違っています
— バーチャル美少女ねむ/Nem⚡Forbes JAPANインタビュー掲載中 (@nemchan_nel) March 26, 2024
「特定班」などと盛り上がっていた人びと・・ https://t.co/0pp7aXZj6f
— 白饅頭(御田寺圭/光属性Vtuber/バーチャルツイッタラー) (@terrakei07) March 26, 2024
サンキューイーロン
— ハニーベア (@water9ress) March 30, 2024
一般人からしても恐怖でしかない
特定班も自分に標的が向いたらと思うと怖いよ…
探偵なり警察なりに相談すればいいだけの話だと思うのでその技術は職業に役立ててください https://t.co/VCwnnfVxVQ
「有名税」は犯罪者の言い訳
「誹謗中傷も晒し行為も有名税だから文句言うな!」という意見がありますが、同意しかねます。どちらも明確に犯罪行為であり、最低限のモラルが保たれないと、無敵の人以外はネットで情報発信ができなくなってしまいます。「有名税」というのは犯罪者の言い訳に過ぎません。私の嫌いな言葉です。
「有名税」は有名人側が使う表現の言葉であって一般人側が使う言葉ではないので誹謗中傷の免罪符ではないですからね。
— 野今譜音【Vtuber】 (@Fuon_Vtuber) March 26, 2024
「子どものしたこと~」や「お客様は神様~」と同じ側の言葉ですね。 https://t.co/Db5RHPtuIs
私も嫌いですね・・・
— 比良沼 紀伊@執筆につき低浮上 (@KeyHiranuna) March 26, 2024
本当に有名なことで払う税金なら、既に累進課税の所得税で払ってるじゃないですか
自立救済は明確に違法ですし、そも特定の顔も知らない相手を引退まで追い込んでボロクソに言うって・・・
正直、何を考えてるのか分かんないです・・・
晒上げ行為や匿名の誹謗中傷など、後先を考えられない頭の悪い人がもの凄く増えている。
— 捺色@Live2D (@natsu_iro54) March 27, 2024
増えているというよりもともといたけど、SNSという誰でも簡単に発信できるコンテンツによって表に出てきたという方が近い気がする。
有名税というなら課せられるのは逆に晒した側のはずなのだが... https://t.co/Nd9YRzI3T6
発言が注目されてしまうのは仕方ないが、だからといって誹謗中傷やプライバシーが侵害されても良いわけではない
— 三日月かなた@ティオ (@MIC_kanata) March 26, 2024
現代社会では私刑は許されない
現代社会では私刑は犯罪です。"法"とは、かつて無法地帯だった世界を安心して生きていける場所にするために、私達が長い時間かけて勝ち取ったかけがえのないものです。ネットでは行き過ぎた行為が暴走しがちな現状ですが、少しずつでもルールが整備されて健全化が進むはずです。私達がそう望みさえすれば。
※参考:リンチ(私刑)とは?
社会的な非行を行った者に対し、法的な手続を経ることなしに加えられる集団的な暴力的制裁。私刑ともいう。社会秩序を維持するためには、これを乱した者に対し社会的な制裁を加える必要があるため、近代以前には、「私刑」とよばれるような集団的制裁が広く行われ、非行を行った者に対し過酷なリンチが加えられることがしばしばであった。これに対し、近代国家が成立し、国家が刑罰権を独占するに至ると、国家的制裁制度としての刑罰制度が確立した。これに伴って、国家のみが、一定の厳格な要件を満たし、しかも、法的な手続に従って、犯罪を犯したものと判断される場合に限り、公的な制裁としての刑罰を加えることが許される。したがって、このような近代的刑罰制度のもとでは、かりに違法な行為を行った者に対してではあれ、私的に制裁を加えることは、違法であるばかりでなく、さらに犯罪として処罰される。
相手が有名アカウントや何らかの加害者であっても身元晒しの私刑はダメ。このポリシーを私は支持します。不適切な行動をする匿名アカウントは弁護士や警察を経由して開示しましょう。また開示請求は世間に晒すためではなく被害者と加害者だけが決着をつけるために行われます。 https://t.co/2zPDmdVbUK
— 榊正宗 (@megamarsun) March 26, 2024
これVtuberもだけど、炎上者の身元特定とかも当てはまるね
— icecoffee@地動説推し (@icecoffee) March 26, 2024
個人的には過剰な晒し上げ行為だと思ってるので賛成したい。炎上者が犯罪行為をしていたとしても、個人を特定したのなら警察に通報すれば良い。 https://t.co/NLqYJjJkHQ
匿名掲示板が賑わってたころは、匿名はけしからんだったのに、いまでは匿名ユーザーの身元バラシ禁止とか時代は変わるなあ https://t.co/3il06gyQB7
— あも✨ (@ahmok) March 27, 2024
なぜネット言論は過激化するのか? メタバース住人の視点
ネットで過激な発言が暴走するのは、文字による非同期型コミュニケーションだと相手の実在感を感じ取れず、実在感のない相手に共感性を失ってしまう人間の本能のバグではないかと私は考えています。
三次元空間で同期型コミュニケーションを行い社会生活を営むために進化してきた生物である人類は、本来であれば周りと平和的にうまく協調していく性質をもっているはずです。しかし、SNSのような空間性のないテキストベースの非同期コミュニケーションでは、相手の実在感をうまく認識できず、人間が持っている本来のフェイルセイフ(安全装置)がうまく働かなくなってしまうのではないでしょうか。
例えば、私が活動しているオンラインの三次元仮想空間「メタバース」では事情は大きく異なっています。私がスイスの人類学者リュドミラ・ブレディキナと実施した大規模調査「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」では、回答者約2,000名のうち、「ソーシャルVRでのコミュニケーションでは相手との距離感が現実よりも近くなる」と67%が回答していました。
![](https://assets.st-note.com/img/1711687987127-rAhB8HliVq.jpg?width=1200)
私の個人的な体験としても、SNSでは過激な言動を繰り返している人がメタバースで顔を合わせて話すと意外といい人だったという事は非常に多いです。また、メタバースにもミュートやブロックといった最終手段は用意されていますが、SNSと違ってこれらを使う機会ははるかに少ないです。オンラインでも相手の実在感をしっかりと認識できさえすれば、良識のある健全なコミュニケーションは成り立つのではないでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1711687899749-0FEjQxFk0o.jpg?width=1200)
常識をアップデートするには時間がかかる
常識やモラルをアップデートするのはとても時間がかかります。でも、例えば現代では、たった50年前と比べ殺人は半分以下になってます。
![](https://assets.st-note.com/img/1711682537323-ej8GuFLbTW.png?width=1200)
※出典:主要国における暴力による死亡率:図録▽主要国の他殺率推移(死因統計)
おそらく、これから50年後には「昔のネットでは誹謗中傷や晒し行為が日常茶飯事だったなんて信じられない!」というのが常識になっているはずだと私は考えます。これから私達を待ち受ける未来のネットの世界がどんなものになるのか、きっと私達一人一人の行動と選択にかかっています。
>50年後には「昔のネットでは誹謗中傷や晒し行為が日常茶飯事だったなんて信じられない!」って絶対になっているはず
— 㐂七さんと約7777プーさん🧸 (@Kishichi7777) March 27, 2024
同意
まだまだ私達はこの環境に対して未成熟
(なお環境は次々出てくる模様) https://t.co/d3rPSptRYV
誹謗中傷でなくてもうっかりには気をつけたいですね。基本的に「本人が公にしていない情報を許可なく第三者が公開することはNG」というスタンスでネットやってればたいていは問題ないはず。実名知ってても垢名で呼ぶとか、誕生日知っててもお祝いリプしないとか、悪気がなくても一線越えないように… https://t.co/gvFsM47uia
— smakita🐋 (@twmaks) March 26, 2024
みなさんの感想
Xの今回の「個人情報と晒し行為に関するポリシー」変更は大変結構。また、@nemch さんのこのスレはとても良いまとめになっている。 匿名性を暴くことの禁止は #言論の自由 を守る上での重要な要素 #プライバシー #doxing https://t.co/4QBFltuwZI
— Nat Sakimura/崎村夏彦 (@_nat) March 28, 2024
匿名ユーザーの実名を晒す行為なんて嫌がらせ以外のなにものでもないわけで、ポリシー違反は当然の処遇だろうね https://t.co/KTkw1uZJas
— ボルボックス (@WNcm2) March 26, 2024
普通に個人情報だしやっちゃいけないことはいけないのよ
— ひなた (@hinata_09_30) March 26, 2024
ユーザー守るためにも、こういう改善はどんどん進めていって欲しい https://t.co/BidsLdFbpb
なるほど、匿名垢に対する実名晒し上げは明確に規約違反になったのか。
— 悪霊 (別名: りょう) (@akuryo_33345) March 26, 2024
twitterにしては珍しく良い方向への改訂なのでは https://t.co/VdnO2s2N5s
ルールとして規定しないと正義棒を振りかざす快楽に屈する人は一定数出てきますからね…。これは必要な良い改定だと思います。
— 野見草かなで@VTuber的な何か (@NomiwKanade01) March 30, 2024
これだけでは防ぐには不十分ですが、まずは必要な一歩が踏み出されたという意味では十分意義があるでしょうね。 https://t.co/dSZ9H5Z3tJ
メディア掲載
Togetterやまとめサイトなどで私の解説コメントを掲載頂きました。
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