#後編 エヴァ序×家族療法|碇家に家族療法を行ってみた!
NEKOZEでございます。
さっそく後編の本題に進みたいと思います。
前回のお話はこちら
クラスメイトと仲直りするシーン
ここまでのNEKOZEの所感
まずはクラスメイトとの和解のシーン。
不安や恐怖に襲われながらも必死に戦うシンジの様子をコクピット内で目の当たりにしたクラスメイト。クラスメイトとのシステムに変化が生じましたね。シンジ君は命を懸けて街や市民を守るために戦っていることに改めて気付いたのでしょう。
妹さんが戦闘に巻き込まれてケガしたことが大変不幸ことでしたが、トウジはその想いを一方的にシンジ君にぶつけてしまったことに間違いを犯していると自覚したのか和解に至ります。
この経験や出来事、そして友人という存在は、今後のシンジ君の人生において重要な資源となります。
家族療法では内外の資源を活用して、システム変化を促します。洞察・行動・新たな視点・新たな解釈・新たな物語などを資源を活用して促します。
わたしNEKOZEだったら、シンジ君にこんな風にアプローチしてみたいですね。
「トウジ君が謝ってきた理由はなんだと思いますか?」
「これまでエヴァに乗ってきて報われなさを感じられてきましたが、今回の出来事で想いに変化はありそうですか?あればどんなことですか?」
「今のシンジ君だったら、過去の自分に何と言ってあげたいですか?」
「別の悩みに対して、今回の見方の変化をどう活用できそうですか?」
「今回の経験で、何が大切だと思いましたか?」
このような質問で、シンジ君の解釈や認知の変容、新しい行動のレパートリーを見つけていきます。
「自分が行ってきた戦いは無価値、無意味ではないかもしれない。悪影響なわけではなかったかもしれない。人の期待に応えられているのかもしれない。見る人によって様々なのかもしれない。僕自身が無価値なんじゃなくて、互いの状況を知る視点が抜けているのかもしれない。
こんな感じで洞察を促します。
注意点は、カウンセラーがこう思って欲しい!こう動いてほしい!と、期待や態度で誘導するのはNGです。クライアントの自律・自己決定・クライアント中心の軸から外れてはなりませぬ。
今回のトウジ君のような変化を人為的に促す方法として、【ロールプレイ】【役割交換】といった技法があります。これは互いの立場や視点を理解して、自分以外の視点から状況を客観的に視ることを促す技法です。
システム変容の糸口が見えてきたところで、次のシーンへいってみましょう。
レイから大ビンタをいただくシンジ君
ここまでのNEKOZEの所感
けっこう強めのビンタでした。シンジ君はどのように感じていたのでしょうかね。
意見や価値観の相違が見られており、レイさんはレイさんの視点で話し、シンジ君はシンジ君の視点で話していて対話はありませんでしたね。
過去似たような件がありましたね。
そうです、トウジ君から殴られたシーンです。
トウジ君と和解したときの出来事で得た経験・見方を資源として活用できそうですね。
この2人の場にカウンセラーが同席していたら、視点・立場の違いを可視化して互いの想いを通訳・翻訳します。考えや意見は違って当然という場を作りだして全員でその違いを客観視していきます。
強敵との戦いとシンジの葛藤
ここまでのNEKOZEの所感
とても苦しそうな状態です。私もこの立場ならとても苦しい状況だと感じることでしょう。
家族療法の視点でみると、内面世界から以下のことが読み取れます。
境界の視点
境界とは、他者との心理的な線引きのことです。
『固着した境界』が見られます。これはメンバー間の関りや支援が少なく、分離している状態のこと。
解決策として、個々の役割・責任を明確にして、誰が何をするのかを明確にして適切な境界になるように調整していきます。
たとえば、相談担当者、メンタルケア担当者、パイロットは相談することが役割、依存しない関係性、自律できる関係性、関心をもつ関係性という風に集団内の環境への変化を促していきます。
注意点は、カウンセラーが指示するのではなくて、集団内でどのような手立てがよいか協働で検討、思案すること。
個人ライフサイクルの視点
個人ライフサイクルとは、生まれてから死ぬまでを8つの発達段階に分けて、各段階において『得られる力』と『課題』を示したものです。
シンジ君はいま年齢的には青年期(13歳~22歳ぐらい)の段階です。
青年期で得られる力は『アイデンティティの確立』です。
アイデンティティとは、自分が誰で、何者で、自分の目的、価値観、目標、方向性といった自己についての確立された感覚のことです。
この段階での課題は『アイデンティティの拡散』です。
アイデンティティ形成に失敗すると、自己理解・自己への不安/混乱/迷い・役割の不明確・選択の困難・目標が設定できないなどのネガティブな要素がつきまといます。
青年期の課題をクリアするために、様々な試みを行います。自己洞察、境界の再設定、親の役割調整、コミュニケーションパターンの変化など多角的な介入を行います。
ストレングスモデルの視点
ストレングスとは、個人の強み・資源に焦点をあてて、それらを活用して行動や成長を促す理論のことです。
シンジ君の強みや資源は、NEKOZE視点でみると以下のことが思い当たりますね。
内省力
責任感
現状を脱したい気持ちを行動に変える力
素直さ、従順さ、純真さ
優しさ、気遣い、思いやり
本質的には人と関わりたいと思っていること
他者と対等に話せる力、初対面でも話せる力、素でいられる力
友人や仲間
自己表現が出来ている(ふてくされや反発も含め)
愛嬌がある
故意に人を傷つける言動をしない
ネルフのバックアップ
衣食住の確保ができている
こんな感じですかね。これらの人生に役立てそうな資源を活用していきます。
では次のシーンを見てみましょう。
シンジ君の他者との情緒的接触と自己決定
ここまでのNEKOZEの所感
ミサトさんともひとまず和解できましたかねぇ~。
一人じゃない、みんなも一緒というミサトさんの打ち明けは非常によい影響が生まれそうですね。
エヴァに乗ると決めたシンジ君の選択が、ミサトさんの開示によって補強された形となりましたね。
ミサトさんは、もっと早く自爆覚悟で職員全員働いていることを告げたら好循環があったかな?と一緒ん考えましたが、ここでもシステム論で理解していきます。
NEKOZEなりの仮説ですが、ミサトさんの視点で考えてみると、シンジ君がエヴァに乗らないという選択肢も平等に残してあげたいと思っていたのかもしれませんね。
職員も自爆覚悟で戦っていることを最初に告げていたら『乗る』という選択肢しか取れないような状況を作り出していたかもしれませんからね。ミサトさんはシンジ君がなるべく自己決定できるように情報を制限していたのかもしれません。
(エヴァ初号機に乗れるのはシンジ君だけなので、乗らないと市民や仲間が死んでしまう可能性アップという責務がのしかかっているという事実は存在していますので、平等な選択がとれるわけではなさそうですが)
カウンセラーとして、互いの視点や想いを言語化して、互いの憶測や誤解をほどく介入をしていきたいと思いますね。
では次のシーンを見てみましょう。
シンジとミサト、レイの情緒的つながり
ここまでのNEKOZEの所感
いよいよ佳境ですね。
これまでの資源が総動員されていますね。
シンジ君はひとりじゃないんだよと、客観的にみてて思いますね。本人には家族相談士としてこんな質問をしてみたいですね。
「あなたを応援してくれる人、サポーターしてくれる人は誰がいますか?」
資源の再発見ができたら幸いです。
さて、次のシーンも印象的でした。
再生時間1:22:21の戦闘開始直前のシーンで、シンジ君はレイに対してエヴァに乗る理由を聞きます。返ってきた言葉が『みんなとの絆』でしたね。
シンジ君のこれまでの視点では、『エヴァ=戦うはめになる/怖い目にあうもの』という認識だったように思えます。
しかし、レイからみんなとの絆と語られたことで、違う見方があるんだなという新しい発見があったかもしれません。
これを心理学の技法では『リフレーミング』と言います。出来事・物の解釈を、別の解釈に捉えなおす効果があります。
リフレーミングって、チョー奥深いんですよ。家族相談士になる前から言葉や意味は知っていましたし、なんなら雰囲気で使っていたこともあります。落ち込んでいる友達に対して別の見方を提示してみたり。
でも家族療法を学んで、リフレーミングの凄さを身をもって体感したんですよ。私は中学生の頃に父親を拒絶して無視し始めました。中学生から30代になるまでほぼ会話していません。一方的に無視してきました。
アルコールでたびたび大きな家族トラブルを起こしている父親を幼い頃からみてきて、この親父の血が自分に流れていることに嫌悪感を感じていました。でも実はそうじゃないかもしれないと、そうならざる得なかったのかもしれない。
そんな思考の大転換があり、リフレーミングってほんとに凄いなと実感したのです。この話は長くなるので別枠でお話ししましょう。
そして最後のシーン。
シンジ君とレイの情緒的な繋がりが生まれましたね。
「自分にはほかに何もないって、そんなこと言うなよ」
「別れ際にサヨナラなんて、悲しいこと言うなよ…」
とっても素敵な言葉ですね(*'ω'*)
これってシンジ君は自分自身に対しても言ってたのかなぁ?レイに自分を重ね合わせて、レイ=自分自身にかけた言葉なのかなぁ?と、家族相談士としてではなく個人的に勝手に妄想しておりました(笑)
この点もシステム変容や資源の発見に繋がりそうであれば、カウンセリングで聴いてみたいですね。
エヴァ序 終盤の関係性(ジェノグラム/エコマップ)
ジェノグラムとエコマップを描いてみました!
見づらいですけども(;^ω^)
ジェノグラムやエコマップは、カウンセラーだけでなく、クライアント自身も一緒に書いていくこともあります。これを書くことで、自分の両親や祖父母世代から受け継がれてきた悪循環な感情、コミュニケーションパターン、認知やべき思考などが明らかになります。
たとえば夫婦関係でトラブルがある場合に、ジェノグラムとエコマップを互いに共有することで、夫or妻が悪いのではなくて、このような価値観や慣習を継承してきたと理解を促します。
そして非難モードから内省モードへ移行して、そして和解に至るというケースもあります。
家族療法ではシステム変容に使えそうなものは何でも使うという非常に柔軟な姿勢を持っています。
後編のまとめ
エヴァンゲリオン新劇場版:序を家族療法の視点で分析してきました。
この勉強方法、非常に良きです!
かなり労力と疲れはありますが、私のようなまだ実践経験が少ないものにとって非常に有益な体験となりました。
他の家族療法家の方にこの分析内容をお見せしてフィードバックを受けるともっと技術を向上させられそうです。
今後もアニメ×家族療法を行っていきたいと思います。
引き続きエヴァンゲリオン新劇場版シリーズでやっていこうと思いますが、実写映画だとリアルな表情・しぐさ・動作まで勉強できるので、何か気になる作品を見つけてみたいと思います。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!