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ゴシップ好きが出世できない理由

情報通の上司がいた。

「いた」、と過去形を使ったのには理由がある。彼らは、今ではもう格下だからだ。



情報通の人とは何度か一緒に仕事をさせてもらったが、最初はその情報量に驚いたものだ。

社内に限らず、地域のことなども精通し、多くのことを知っている。

特に強かったのは情報というより「ゴシップ」で、スキャンダラスなことや過去の失態など、当人にとってマイナスとなる情報について豊富な情報を保有していた。

頼んでもないのにそんなことを話してくるのも、共通の特性だ。

話し方も似ていて、少しニヤけながら声を潜めて話しかけてくる。その表情に爽やかさなど一つもなく、正に邪悪そのものといった空気感があった。

とはいえ、こっちもそういう話は嫌いじゃないからつい聞いてしまうのだが、かといって自分から積極的に収集しようとは思わない。

僕もいくつかゴシップを保有しているが、自分で調べたもではなく、ゴシップ好きの彼らが勝手に話してきたものをストックしているだけだ。これでは情報通にはなれない。

彼らは、能動的に情報を収集している。

内線やLINEなどを使い、日々情報を収集しているように見える。その熱意は見上げたものがあるが、はっきりいって気持ち悪いとしか感じない。


以前、情報通の一人であるA氏と、ある支店の前で迎えの車を待っていた。

その支店は商業施設に隣接しており、周りには多くの車が駐車してある。

A氏は、駐車場の方を指差して

「あの黒い車、◯◯さんの車だね。昨日は◯◯に止まってたな。ああ、あの車は◯◯さんので……」

と、聞いてもないのにいきなり特定祭りを始めたのだ。

そこはAさんの地元であり、知り合いが多いのはわかるが、車まで暗記しているのはちょっと異常だ。はっきりいって気持ちが悪い。

僕も他人に興味がないわけではないが、誰がどんな車に乗っているかなんて全く覚えていない。道路ですれ違ってもぜんぜん気がつかない。

狭い田舎社会では、僕のような人間の方が少数派かもしれないが、それにしてもAさんは異常だと感じた。

そして、そんな性質を持つ人が、何人も社内にいる。


彼らは共通して、出世が遅い。

というか、頭打ちになっている。

今では、先輩である彼らよりも、僕の方が上位の肩書きになっている。

それは、「気持ち悪い」以外の、大きな欠点があるからだ。

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