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【散文】 国と会社に外注していたタスクを、巻き取らなければならない時代に

「知ってますか? M、辞めるんですよ」

それだけなら驚かなかった。でも、次の言葉を聞いて絶望を感じた。


先日、ある営業店に行った。来月の企画についての協力依頼だ。

その店には過去に何度か一緒に仕事をした後輩がおり、彼と少し話せるのも楽しみだった。

彼は、相変わらず元気がなさそうだ。それもそのはずで、営業店は人が減少しており、どこも必死になって店舗運営をしている。とても明るい表情など身内に出している余裕はない。

そんな彼と話しているなかで、冒頭の情報が入ってきた。


M君は、人当たりのいい人物で僕も好感を持っていた。

仕事の質はどうかわからないけど、戦力としては十分で、今後も伸びていってもらいたい人物だ。

誰かと衝突することのない、基本的な配慮ができる人物であり、人間関係が拗れているとの噂は一切なかった。そんなM君が退職する理由は誰も聞いてないという。

とはいえ、辞めるものは仕方がない。問題は、残された側だ。

後輩の彼は、こう続けた。

「補充人員はないそうです。それは今は送り込めないって話ではなくて、送り込める見込みは今後もないってことらしいです。いったいどうなってるんですかね、うちの会社」

クラっとした。

この営業店が担当しているエリアはとても広い。全店でもっとも広いエリアと言っても過言ではないだろう。そのエリアを一人減の状態でカバーすることは不可能としか思えない。

営業店としては、抜本的な営業活動の見直しを図る必要があるだろう。それはサービスの低下を意味し、顧客にもそれなりの理解を求めなければならない。

明らかに負担は増加する。かといって、目標を減免してくれるわけではない。期初に建てた目標は不動の中、人員減で達成をしなければならない。

かつて支店長をしていた身としては、聞くだけで絶望感に襲われる話だ。

しかし、こんなことが起こっている店は他にもあるという。

これまでの感覚でいえば、もう崩壊していると言っていい。

これから、この会社はどうなっていくのだろう。


ひとつ、確かなことがある。

われわれは、これまでのままではいられないということだ。

あなたは、それを本当にわかっているだろうか?


+++++++

基本的に尊敬できない先輩がいる。

彼は、20年くらい前に、僕にこう予言していた。今となっては慧眼としかいいようがない。

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