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キラキラする前に、ちゃんとギラギラしなよ

「◯◯◯に、学校を建ててさ」

そんなことを言っていたあの社長は、いまどこで何をしているんだろう。



30代前半の頃、毎月訪問していた会社があった。

建築業で、地元ではそこそこの老舗だったが、最初に訪問したときに一発で好感を持つことになった。

その会社の事務所へ向かう途中、作業している若い社員がこちらに気がつくと

「こんにちは!お疲れ様です!」

と元気に挨拶をしてくれた。

その風体は田舎のちょっとヤンチャな職人だったので、驚いてしまったのだ。

「あんな感じの社員なのに、しっかりと挨拶を自発的にできている。素晴らしい社員教育だ…」

人を見た目で判断してはいけないが、とても感心してしまったのだ。


その会社は、住宅を建築した際に、入居する家族へのセレモニーを行ったり、地域貢献を行ったり、有志でアジアの国に学校を建てたりしていた。ホスピタリティと社会貢献の精神に溢れた会社に見えた。

一方で、社長と会社で会うことはほとんどなかった。東京や大阪などへの出張が多く、会社の実務的なものは部門長に任せている感じだった。

たまに社長と面談すると、「きみと話すのは退屈なんだ」と言った感じで、熱のこもらない乾いた表情で対応されていた。

本来なら腹の立つところではあるが、海外で学校を建築してしまう集団のメンバーになっているほどの方だから、しょうがないと思っていた。僕なんかと話す時間は無駄なのだろう。田舎の平凡な会社員だから、まあ仕方ないよなと思っていた。

社長は、いつも小綺麗にしていた。作業服を着ているときもあったが、そこにはシミひとつない。年齢は50代前半であるが、どこか都会的で、洗練された印象があった。この地域では珍しい。

「従業員教育といい、社長のスケールといい、社会貢献といい、この企業は大したものだ。安定して成長していくんだろうな」

そう、感じていた。

しかし、その予想は見事に裏切られた。


僕が担当した数年後、衝撃的な一報が入ってきた。

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