「真面目さ」が終わった年
2023年12月20日、ダイハツ工業株式会社は「第三者委員会による調査報告書公表のお知らせ」をリリースしました。
ダイハツ工業は、2023年4月28日に海外向け車両の側面衝突時の安全性を確認する試験の認証手続きで不正があったと発表し、第三者委員会を設置し、原因の解明と再発防止策の策定を進めてきました。その結果としての今回の調査報告書です。
第三者委員会は問題の真因を下記に示しています。
この中で、「短期開発の強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んだものであり、不正行為に関与した従業員は、経営の犠牲になったといえ、強く避難することはできない。」とあります。
この報告書には従業員のアンケートも多数取り上げられており、その中からも「短期開発の強烈なプレッシャー」を感じることができます。
報告書では、ほとんど余裕を持たせていない開発期間であったことが指摘されており、試験で不合格となれば即期日オーバーとなることから、検査を偽装したことが示されています。
また、「間に合いません」と言えない理由として、以下の意見もありました。
不謹慎ではありますが、読んでいて親近感があります。
無理だと言っているのに「出来るためにはどうするのか?」と問いかけられた上で、正解のない議論をし、結果受け入れさせられる。どこまでもどこまでもリアルな描写です。
期日やノルマを達成するために不正に手を染める。問題発言かもしれませんが、どの会社でも内包している古くて新しい問題でしょう。
ただし、この報告書を見ていると、不正を行ったのは従業員であり、「管理職が現場レベルの不正行為を指示し、あるいは黙認した」事実は認められなかったと明記してあります。
これが事実なら、現場の従業員が自発的に独断で不正行為をしたと言うことになりますが、本当でしょうか? にわかには信じられない部分です。
それはともかく、現場の従業員が不正であると認識していながら行ったのは事実でしょう。直接手を下したのは従業員である。それは間違いがない。
第三者委員会は、調査報告書の最後を以下のように結んでいます。
「当委員会が接した従業員は総じて真面目であり、改善の方向性さえ間違っていなければ必ず信頼を回復できる」
私は、事件の真因はここにあると思います。
従業員が総じて真面目であったこと。
それに尽きる。
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今年は世間を揺るがしたもう一つの不祥事がありました。ビックモーター事件です。
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