残業する中年は、たいがい暇人である理由
その日はめずらしく遅くまで職場に残っていた。
自社のホールでセミナーがあり、撤収が完了したのは21時を超えていた。自分のチームが運営だったから、残業も仕方ない。
撤収が完了し、やれやれといった面持ちで本部に戻ると、同年代の社員がまだ仕事をしていた。
それを見た時、思わずこう言いそうになった。
これはもちろん、間違いだ。完全に間違っている。
なんせ、彼は暇じゃないから残業しているのだ。そんなことは考えなくてもわかる。
でも、僕は反射的に彼を暇人だと思った。
それには明らかな理由がある。
アラフォー以降で会社で残業している人は、基本的に暇なのだ。
それを心の底から理解できないと、開けない扉というものがある。
あなたはこの先を読んで、「それは極論だよ」と笑うことができるだろうか?
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残業の彼は、以前から長時間残業をすることで有名だった。
仕事や組織に対し熱く、使命感や責任感の塊のような人物で、周りからも一目置かれる存在だった。
もちろん、実績も叩き出していた。その結果、支店長クラスにまで上り詰めている。
そんな彼は、あるとき本部の方針に納得いかず大揉めし、支店長から外された。その後、本部に来たというわけだ。
他の金融機関もそうだと思うが、いまの時代に長時間残業は許されない。働き方改革が浸透したことにより、長時間の残業は大罪と見做されるようになっている。一時期など、個別ヒアリングでコンプラや業績などの前に残業時間についての聞き取りが優先され、その本気度を感じたものだ。
そのおかげで、いまでは残業は極限まで削減されている。その分仕事は忙しくなったが、基本的に善きこととして受け止められている。
そんな環境になったというのに、彼はいつも最後まで残って残業しているらしい。
「らしい」としか言えないのは、僕がさっさと定時に退勤してしまうからだ。最後までいたことがなく、観察できていなかった。
彼が遅くまで残っているのを、先日初めて見たのだ。
彼は仕事ができる人間だ。それは間違いない。
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