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独立する奴は、バカなのかもしれない
昨年12月の日経新聞でこんな記事がありました。
2019年から2024年にかけて、フリーランスから会社員への転職が増えているとのことで、その数は右肩上がりだそうです。
記事の中では、その原因としてフリーランス側と企業側の双方の事情があるとしています。
フリーランス側は、自分で案件を取る営業力不足と、収入の不安定さがあるとのことですが、そもそも安定収入を捨ててフリーランスを選んだ人が多いと思いますので少し「バカなのかな?」と思わないでもありません。
企業側は、やはり人手不足が原因です。転職市場から積極的に人材を取ろうとしていることから、間口を広げていると思われます。フリーランスがフラフラっと改宗してしまう条件を出しているのでしょう。
では、会社員はフリーランスと比べて有利かといえば、そうとも言えません。
マスコミやSNSでは、会社員の未来は明るいと言う論調を見ることはなく、「会社員やばいよ」といった空気が蔓延しています。
特に社会保険料に関する怨嗟の声は近年明らかに大きくなっており、昨年の衆議院議員選挙では大きな論点となり、現役世代の手取りを増やす公約を掲げた政党が躍進しました。そして実際に「103万の壁」について改正を行う方向で議論が進んでいます。
そして、社会保障に関する議論は、現役世代とリタイア世代との世代間闘争まで発展する危険性があります。今はその一歩手前といったところでしょう。
そこに伏流するのは、「会社員は搾取されるしかない」という前提です。
会社員は源泉徴収で税金を先取りされ、社会保険料も強制的に支払わされています。何しろ天引き後の給与を受け取るしかないのですから、逃げることはできません。そうなれば、制度に対し抵抗することは不可能であり、まな板の上の鯉になるしかないのです。
「会社員のままでは、自分の人生はほぼ搾取されるだけで終わってしまう。そんな人生でいいのか?」
これは動かし難い事実であり、誰も「搾取されるの楽しい!」と思わない以上、現役世代に共通する感覚のはずです。
しかし、現実ではさまざまな要素があるとはいえ、フリーランスから会社員への回帰が起きています。
これまでも搾取されつづけ、これからはもっと搾取される見込みが濃厚な会社員に戻りたいと願う。
独立してうまくいかなかったマヌケ。そう言ってしまえばそれまでですが、「独立しないと搾取されて終わる!」という流行りの主張とは真逆のトレンドであることは気になります。
果たして、あなたは会社員を辞めて独立すべきでしょうか?
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私は金融機関に勤務しており、これまで数多くの退職する人の背中を見てきました。
そのほとんどが転職です。
転職先は地元企業が多く、大抵はスムーズに決まります。私が住んでいるのは田舎であり、田舎にはまともな人材が不足していることから、金融機関上がりの人材ははっきりと当たりなのです。
自分で商売を始める人もいますが、かなり少数です。そもそも初めから金融機関を選ぶ人物は、独立の野心を持たないことが多いのです。独立するつもりなら、最初からその業界を目指すのが普通で、他業種での経験は無駄ではありませんが遠回りでしかありません。
数年前、ある先輩A氏が会社を退職し、個人でコンサルティング事業を立ち上げました。
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