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俺たちはカラーが観たいんじゃない。ガンダムが観たいんだ

2025年1月18日。僕は映画館にいた。もちろん、「機動戦士Gundamジークアクス」を観るためだ。そのために、クソ寒い休日の早朝を台無しにしたのだ。

公開初日からネタバレの波にさらわれると思っていたら、俺のTLには全くと言っていいほどネタバレが流れてこない。ていうか皆無だった。TLを「おすすめ」に設定しても流れてこない。ガンダムを愛する人たちの民度の高さを思い知る。いや、コア層が単に高年齢化しただけかもしれない。

とはいえ、いつかはネタバレに触れることになる。「ゼルダの伝説ティアーズ オブ ザ キングダム」ではyoutubeのサムネでネタバレ爆撃を喰らいNintendoの知らんぷりを激しく呪ったものだ。

ネタバレを喰らって感動や驚愕が薄れることは絶対に避けたい。あとの人生でこんな機会が何回あるかわからない。機会一つ一つを丁寧に受け止めていきたい。アラフィフになると「あと何回桜が見れるかな…」みたいなことをちょっと考えるようになる。

と、言うわけで、公開二日目に観ることにした。

妻に「一緒に行く?」と聞くと「なぜ私がガンダムを見なければならないのか?」と至極真っ当な返答があった。そこで「ガンダムをリアタイしてきた世代だからこそガンダムを観るべきだし、ガンダムは様々な社会問題や政治的視点、ひいては子育てにも有益となるコンテンツであり、富野節が最高」と説得を試みても良かったのだが、人はわかりあえないことをガンダムで学んでいたので諦めた。ガンダムからの学びで争いを回避したのである。


とにかく、観ろ。

そう言ってきたのは友人の竹林先生であった。

竹林先生は大学教授であり、その立場に相応しい理知的な人であるが、ことご趣味の分野においては感情が先走る方である。ぜんぜん理知的ではない。推しの子のかなとあかね論争でいつも衝突してしまう。僕はもちろんあかねである。

そして作品に対しても厳しい目を持たれており、イベントにも参加するなど現地現物を重視し、作品を評価している。本当は仕事してないんじゃないかと思っている。

そんな竹林先生が、ジークアクスを絶賛していた。

これは意外だった。

僕は以前に裏ラジオで「俺たちはカラーが観たいんじゃない。ガンダムが観たいんだ」と雑談コーナーで叫んでいた。

予告編が公開されたとき、その映像から感じるエヴァ感、というか庵野臭。それを観たときの最初の感想は

「簡単に◯◯開いてんじゃねえぞサンライズ!!!!」

だった。

もちろん、近年はリメイクブームであることは知っている。

ゴジラから始まり、ウルトラマン、仮面ライダーと「シン」シリーズは軒並み好評を得ている。ゲームだってDQ3のリメイクが売れているなど、過去にヒットしたコンテンツの焼き直しが当たる確率は高いように見える。そもそもエヴァンゲリオンだって庵野氏によるリメイクと言ってもいいのではないか。

当たった過去のコンテンツを、そのコンテンツにどっぷり浸かっていた年代が、愛と熱意を持ってリメイクする。よくよく考えれば良作が生み出される強固な構造があるのだと気が付く。僕たちはまんまと虜になっているが、同世代が僕たち好みに味付けをしているのだから「まずい」と感じることの方が難しい。口に入れたら「うまいやんけ!!」となるのは合理的な話だ。

また、リメイクブームには当然に経済の側面もあるだろう。アラフォー以上をターゲットにすることで、比較的金銭的余裕のある層を狙い撃ちにすることができる。ブームは若者が作るものだが、若者は壊滅的に金がない。僕の娘たちの話を聞いていても、それは顕著に感じられる。若者を相手にするのは拡散が目的であって、狙い撃ちすべき財布は中年層なのだ。

ガンダムが「シン」化されてしまう。

そこに、嫌悪感を感じた。

ゴジラやウルトラマン、仮面ライダーではそんなことは感じなかった。もちろん、世代ではないという部分は大きい。だが、それだけではない。

それら3作は、基本的に完結していると認識しているからだ。

ゴジラは完結したコンテンツだ。それは間違いない。ウルトラマンや仮面ライダーは今でも続編が作られているが、それは平成に仕切り直しをしたものであり、オリジンとしてのウルトラマンや仮面ライダーは完全に終わっているといっていい。

そんな、いったん倉庫に入った作品を「シン化」するのは問題ないと感じていた。過去の偉大なクリエイターに敬意を払いながら、新解釈で陽の元にもう一度出す。オリジンとは綺麗に一線を引いている感じがした。それは、オリジンが完全に完結しているからだ。

しかし、ガンダムは違う。

ガンダムは、いまだに完結していないコンテンツであり、オリジンと言われる初代機動戦士ガンダムだっていまだに歴史の倉庫に入れられているわけではない。

ガンダムは、一本の線で繋がっている作品群であり、その末端は閉じられていない。つまりは、まだ寿命を終えていないコンテンツなのだ。

まだ生きている、完結していないものを、「シン化」されてしまう。

ちょっとまってくれよ、まだ生きてるじゃないか。何勝手に死んだみたいに扱おうとしてんだよ。

そう叫びたくなってしまう。

リメイク、新解釈、新路線。呼び方はなんだっていい。それらはコンテンツが完結してから好きにやってくれ。浦沢直樹の「PLUTO」面白かったしな。敬意を持って完結したコンテンツを擦るのは大歓迎だ。

でも、リメイクの達人であるカラーに、現役のコンテンツを触って欲しくない。それは違うだろって。ダメだって。ガンダムは生きてるって。自分のとこのエヴァすら完結前にリメイクする会社にやらせちゃダメだって。

俺たちが観たいのは、ガンダムなんだよ。シン・ガンダムじゃないんだ。

予告編を観る。ジークアクスと呼ばれる主役機がクネクネと動いている。

あかん。2号機やん。エヴァ2号機。アスカやん。

メカ造形、カット割、カメラワーク、BGMまで、全てがカラー臭い。チラッと観た人は「あれ?エヴァってまたやるの?」と思うだろう。それくらいだ。

やっちまったじゃん。やりやがったじゃん。商業的成功ですか?お金ですか?話題性ですか?安直なんだよカラーと組むなんてさ。「夢が交わる」じゃねえよバカかよ悪夢だわ。これをガンダムと思ってか?無理だね。エヴァだもん。まだターンエーの方が許せるよ。主役女の子はいいわ。水星で履修済みだから。最高だったしな水星。あれほどリアタイにこだわったアニメはなかったわ。Twitterのトレンド制覇してたよな。楽しかったな。でも今回はダメ。エヴァダムは無理なんよ。富野連れてこいよ。お前これでいいのかよって。こんなん許す前にやることあんだろ。そう閃ハサ2部だよ。はやく富野節聴かせてくれよ。「散歩に出るが?」とか聴かせてくれよ。


様々な思いが渦巻く中、劇場のシートに腰を据える。一人、スクリーンを見る。

テレビシリーズは、ガンダムの正統だ。OVAよりも上位にあると聞く。これが受け入れられなかったら、僕はどうしたらいいんだろう。もしかして、これも年ってやつなのかな……

照明は、音もなくその役割を放棄し、会場を闇に明け渡す。

いよいよ、シン・ガンダムが始まった。







最高でした本当に申し訳ございませんでした拙者みたいなゴミムシが戯言を言ってまじでほんますんませんめっちゃ面白かったです一生ついていきますってかテレビ放送いつからですか待ちきれませんしメカ最高でしたガンプラ買いますキャラも立ってて一発で感情入りましたおっさんも出てきて最高ですそうですよねかっこいいおっさんはガンダムに必須ですよねいやあわかっていらっしゃるさすがすぎますですからテレビ放送はやくはやくはやくはやくはやくはやくうううううううううううううううううううううううう



《終》


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