ルールを知らないオーナメント / 毎週ショートショートnote
「クリスマス終わったし片付けようか。」
窓辺のツリーの電飾がモールを曲げただけの手作りの飾りを照らす。
「片付けないで。クリスマス大好きなの。」
私の大好きという言葉にパッと笑顔になると、ぎゅっと私を抱きしめる。
「この電飾は点滅の間隔が変だしオーナメントもちゃんとしたの買ってあげるよ。」
私は急いで首を振った。
「このまま飾って。お願い。」
お願い、と言われて男が嬉しそうに私の髪を撫でる。と玄関のチャイムが鳴った。
軽く舌打ちして向かった男の声が聞こえてくる。
「オーナメントのルールとか知りませんよ。ちょっと個性的な飾りを吊るしたら警察が来るんですか?」
私は大声で叫んだ。
「助けて!助けて!」
ガタガタと椅子ごと移動して窓辺のツリーを倒す。ガシャンと大きな音を立て、曲げたモールが床に散らばった。
「くそっ!モールの飾りなんて変だと思ったんだ。お前、SOSの形にしてたんだな!」
拘束を解いてもらった私は久しぶりに立ち上がり、男を見下した。
「電飾もモールス信号にしておいたのよ。あんたが馬鹿で助かったわ。」
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