半分ろうそく / 毎週ショートショートnote
娘が白い蝋燭の炎をじっと見ている。しばらくしてふっと吹き消すと蝋燭から煙がひとすじゆらりと上って消えた。
「あーっ駄目かぁ。少し早かったかな。」
「何をしているの?」
「半分蝋燭。仏壇用の蝋燭をぴったり半分で吹き消すと、亡くなった人に会えるんだって。」
「あら怖い。」
テーブルには蝋燭の箱が二箱も置いてある。
「もしかしたら、お父さんに会えるかも知れないじゃない?」
あの人が亡くなってもう半年経つのに、まだ寂しいのだろうか。
「そんな子供騙しを試すような年齢じゃないでしょう。蝋燭を無駄にしないで頂戴。」
「…まぁ信じてないけどさぁ。」
娘は渋々蝋燭を片付けた。
娘が眠った後で蝋燭を全て箱から出すと丁寧に少しづつ底をカッターで切り落とす。決して半分にならないように。
例え幽霊でも出てこられては困るのだ。
「大丈夫。ただの噂話に決まってる。」
震える掌にあの人を殴った感触が未だ生々しい。
大丈夫。誰にもバレやしない。大丈夫。
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