残り物には懺悔がある / 毎週ショートショートnote
「じゃあこの子にしようかな。」
私は「んー。」と言いながら眉間に皺を寄せた。
「その子はやんちゃで躾が大変かも知れません。こっちの方が飼いやすいですよ。」
白い子猫を女の子の腕に抱かせてあげるとニャアと小さく鳴いた。
「可愛い!この子にしよう、ママ。」
裏庭で産まれた野良猫が引き取られてもう十五年。黒猫のフクは残り物、と言うより私が気に入ってどうしても手放せなかった。
「やんちゃだなんて嘘ついてごめんね。」
フクの兄弟たちはもっと快適な家で過ごしているだろうかと古く隙間だらけの我が家で思う。
秋の陽射しを浴びて縁側で丸くなる老猫フクを撫でるとそんな気分じゃなかったのかフクは立ち上がり、壁の方へと突進した。
パシッ。
フクのふかふかの前足から一目散に小さな蜘蛛が逃げ出した。
成程。古い家にも猫の楽しみはあるのか。
とは言え蜘蛛は苦手なのでフクに捕まらないように箒と塵取りで捕まえて外へ逃した。
ニャア、と獲物を取られたフクが文句を言った。
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