告白水平線 / 毎週ショートショートnote
崖の上のブランコは水平線を背景に美しい写真が撮れると人気らしい。
「夜に来たって水平線なんか見えないよ。」
「いいから、座って。」
すでに心変わりしている僕はため息をつきながらブランコに座る。海は真っ暗闇だ。
どん。
ぱらぱらぱら、どどん。
「おっ!花火じゃん!」
夜の海に行きたいなんて我儘を言ったのは僕と花火が見たかったのか。可愛い所もあったんだよな。今夜はどこかに泊まって、別れるのは来週にしてあげよう。
「見えた?水平線。」
「見えないよ。花火見るだろ、普通。」
背中から抱きしめられる。
「いつもよそ見ばかりしてたね。」
ゆっくりと離れる彼女の方を振り向こうとする。が、何かが足に引っ掛かった。
崖下の真っ暗闇から無数の手が伸びる。
僕の足を、膝を腕を掴む黒く濡れた手。
「何これ、おい、たすけー」
頭や顔を掴む手の隙間から、笑いながら僕の背中を押す彼女が見えた。
「ここ本当は自殺の名所なの。」
どん。
え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。