ある日のニューヨーク4 世界最大のハロウィンパレードに小さな楽器の演奏者として参加したはなし
ハロウィンパレードに演奏者として参加した。
観客としてではなく公式の出演者として、だ。
ニューヨークでは毎年世界最大のハロウィンパレードが毎年開催される。
私はAgogôという楽器を担当して、演奏グループの最前列だった。
偶然にも今年は私の所属する団体が、全体のパレードの先頭らしい。
そんなわけでお私はなぜか成り行き上、今年のパレード行列の一番前で演奏することになってしまった。指定のお揃いTシャツだけではとても寒いので、Tシャツの下にあたたかい服を着込む。
全員でそろえた光る眼鏡をつけて、白いズボンをはいた。
安い大量生産の光る眼鏡はルハーサルの時点でライトが切れてしまったが、
あたまにつけたガイコツの飾りのライトはまだピカピカしている。
観客を入れると25万人もの人が参加しているらしい。
本番前の出演者控えゾーンは賑やかで華やかだ。
煙をはく巨大ドラゴンに20メートルほどの大きなお化け、ガイコツの集団、20人ほどのスーパーウーマン、銀色のロボット達、殺人ピエロ、ロボット、ピカチュー、なんでもありだ。
待機ゾーンには仮設のトイレがあって、ドラキュラや、蜂やら、妖精やらが、もじもじしながら長い列をつくっている。
練習の音だしをして、リハーサルをしていると、なんとなく合図があって、気がつけばパレードは動き出していた。
パレード外の歩道は、人が動けなくなるくらい満杯の人だ。
大勢の人がカメラを構えパレードを撮影している。
きっと映画の大スターなんかは、こういう風景を毎日みているんだろうな、と思ったりもする。
私の展示にこんなにお客さんがきたら大変だな。と思う。
頭をピカピカさせながら、1時間半ほど進む。
歩きながら演奏するというのは初めてだったけど、思ったよりも良く出来た。
帰りの道の途中では、
使い終わったパレードのお化けの巨大模型達が、死体のように倒れている。
(既に死体ではある)
役目を終えて大急ぎで解体されトラックに担ぎ込まれていく。
トラックが、パレードで疲れ果てたおばけたちの救急車、
もしくは霊柩車だとすると、その行き先はどこになるんだろうか。
ガイコツが、さらに「死んだ」場合というのは、どの段階なんだろう。
終演後、演奏グループ全員で食べるはずのタイ料理店の座席は全然足りなくて、しかたなく隣の店に別れて、友人とラザニアを食べた。