クランマザーたちのベルト
七色に光るビーズを、しっかりとベルトに縫い付ける。貝殻を削って作ったビーズは、決められた通りに並べなくてはならない。正しく伝わるように。貝殻のベルトは、私達一族の大切な歴史書であり、日記だ。
しばらくすると、扉の外が騒がしくなった。会議中だった母たちが帰ってきたのだろう。貝殻のベルトを丁寧に折り畳む。
「ただいま」
「お土産あるのよ、今日はカボチャと大豆」
「あら、ベルトを縫ってたの」
「上手ね」
「上手だわ」
「あら、綺麗」
「綺麗ねぇ」
「私も昔、こういう柄で縫ったわ。懐かしい」
「私も私も。楽しいのよね、青春だわ」
「私は今も縫ってるわ。今度一緒に縫いましょうよ」
「そうね」
「お茶会もしましょうよ」
「そうね」
「いいわね」
私がテーブルに置いたベルトを囲んで、母たちはおしゃべりをする。お土産だと手渡された大きな麻袋を担いで、私は台所に向かった。
コップを人数分、大きなお盆に並べて、ほのかにミントの香りがする冷たい水を入れていく。
母たちは、この街のリーダーだ。布を織り、野菜や花を育て幼子を世話して、常におしゃべりをしながら、この街のインフラや治安もしっかり守っている。
老若男女から尊敬される母たちはたくましく、優しい。世話係をしている私も大好きだ。
グラスでいっぱいのお盆を持って、母たちが集まるテーブルに向かう。
「どうぞ。喉が渇いたでしょう。ちょっとミント入ってます」
「「あらあら、ありがとう」」
綺麗に揃ったお礼の言葉に、少し笑ってしまう。母たち一人一人のことも、しっかりベルトに残すつもりだ。
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