21xx年。学生。

「起きろぉ?」
そう語りかけてくる君はそこにはいない
21xx年、世界は約1世紀前に流行った病によって地は沈黙に包まれていた
とは言っても外に何もないわけではない
窓を覗くと太陽が降り注ぎ新緑の芽が頭をのぞかせている
そして空には車が走っている。
昔はこんな鉄の塊が地面を走っていたと思うとぞっとするね
外を眺めていると「こらL、どこ見てるんだ。モニターを見なさいモニターを...全く近頃の若いもんは」とお𠮟りを受けた。教授は今日ファームウェアのでかい更新が入って不機嫌らしい。
(あんただって十分若ぇよ...)と心でツッコミを入れながらペンタブに講義を書き殴る。
ネットネーム呼びにはもう慣れた。教授の趣味だ。なんでも、「そのほうがみんな仲良くなれる」とか。
あんま変わらない気がするけどなぁ。
コンピューター史は退屈だ。
なぜ128コアのような骨董品の話を聞かないといけないのか...
教授は骨董品マニアらしく、pc9...8だったかな?そんな名前のするものを「148.22ビットコインで落札した!」とこの前とても喜んでいた。世界に10数台あるうちの一つだそうだ。
なんで計算機より性能が
低いものにそんなに夢中になれるのか...
何よりクソ高いわ()
そんなお金があったら新しく出たACPK社の全方位型ヘッドセットレスVRが何百台も買えそうだw
( ^ω^)・・・
そうこうしているうちに講義が終わっていた。やべぇ半分以上書き取れてねぇ。
あいつに朝起こされたときの声を反芻しすぎた
録画したやつ見直すのめんどいし、あいつに送ってもらお
こんなことをしているからいつまでたってもリジェクトされまくるのである
あいつにもリジェクトされないといいけど()
今日は秋葉原にジャンクを漁りに行くと決めていたんだ。
講義のレポートなぞに邪魔されては困る
マスクとアルコールを持って外に出る
一か月ぶりの外だ
昔はマスクをつけないのが普通だったらしい。おばあちゃんが言っていた。
マスクを外で外すことは避けられている。なんでも、人間が引きこもりすぎて免疫が弱くなり病気にかかりやすいのだそうだ。何かに触れたときのアルコール消毒も欠かせない。
外に出ている人はほとんどいない。まぁそれもそうか。
普通は病気にはかかりたくないし、そもそも世界の役割の半分は仮想世界に置き換わっているからだろう。
わざわざ店に出向く必要がないのだ
まぁ俺は生粋のジャンカーだから審美眼で実物を選ぶけどな( ゚Д゚)
やはり実物を見て選べる分当たりが多いな。XRTX7150LTSが落ちていた。
積層セラミックコンデンサが欠けているようだ
家で治せるだろうと得意げに購入。0.02ビットコインもしたからにはマイニング工場できりきり働いてもらおうか('ω')ノ
家に帰ると例のあいつから返信が来てた
「自分で聞いとけヴァーカ^^」 3枚の写真の添付
なんかが高速で心に刺さったが、一応これで明日は持ちこたえることができるだろう。
口は悪いがいいやつ(?)なのだ。
朝も起こしてくれるしな
寝起きの電話をよこしてくれるなんて多分あいつくらいじゃないだろうか
いつものお礼に今度ポピー横丁で飲み会でもしようかと思った。もちろん俺のおごりで。
そん時に「今宵は月がきれいですね」とか...
ダメだぁ厨二病臭いしそんなこと言う勇気ねぇw
と悶々しながらレポートを書き終え、床についた。

いつか「起きろぉ?」を隣で聞けるようになるかなぁと思う1日だった。

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