かしの ねこ

短編小説と登山、読書感想文について主に書いています。

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最近の記事

nasudake 百名山に登って来たよ〜栃木編〜

日本百名山に「那須岳」という山が存在する。しかし正確にいうと「那須岳」という山はどこにも存在しない。少なくとも地図の上においては。 日本を代表する登山家である深田久弥は、著書『日本百名山』の中で「那須岳とは那須五岳の中枢を為す茶臼岳、朝日岳および三本槍岳のこと」と記している。百名山にはたまに、このようなまどろっこしい山が登場する。詳細は割愛するけれど、赤城山や立山などもそう思う。那須岳の地図を買ったものの「那須岳はどこか」について、夫と議論した私の時間を返して欲しい。ちなみ

    • 雪頭ヶ岳 〜空と雲と、時々、富士山〜

      6月の梅雨入り前、そして緊急事態宣言解除後のタイミングである某日曜日、私は満を持して、山を登りに車を走らせた。正確には寝ぼけ眼の夫を6時に叩き起こして運転させたので、車を走らせたのは私ではなく夫だった。向かったのは富士山が見える山梨県は富士河口湖町。 西湖を跨いで富士山と対峙するその山は、雪頭ヶ岳と言う。標高は1,720メートル。それほど高くはないが、登り高低差は823メートルもあり、はっきり言って初心者には優しくない。スカイツリーよりも高いと言えばわかりやすいかもしれない

      • 読書感想文 : 「猫を棄てる」を読んで。目の前、または140文字の先にいる人のルーツを想うこと。

        村上春樹さんの新刊「猫を棄てる 父親について語るとき」を読んだ。 初めて「ノルウェイの森」を新宿の本屋で手にしたあの日から、私は、村上春樹の本の魅力に取り憑かれてきた一人だ。 久しぶりの村上さんの新作、しかも村上さんの個人的なルーツを知ることになるこの本を手に取ったとき、久しぶりにワクワクした。 猫を棄てる、の題名になった物語ある夏の午後、少年だった村上さんと村上さんのお父さんは、地元の浜へ猫を棄てに行った。棄ててから2キロも自転車を漕いで戻ったというのに、家に帰ると「