海底に、月
毎日のように、深夜に目が覚める人魚がいた。辺りは暗く、さかな一匹も起きていない。落ち込んだ様子でため息をついている。
泡となり、しばらくフワフワと浮かんでは、すぐに割れた。それを目で追ったあと、海藻のあいだをスイスイとかきわけるように泳ぎだしている。
岩場に着くと、透明なブルーにまばゆい光が差し込んできた。
「みんなには怒られるけど、これを見ないと眠れないのよね」
視線の先には、溶けているかのような満月があった。
波が揺れるごとに、キラキラした柔らかい灯りも反射している。
これを見て、安心したようにすやすやと眠りについたようだ。
ところが、その数時間後―――人魚の三倍以上の大きな波がやってきた。飛び起きて、元の場所に行こうと藻掻いている。だが、その努力も虚しく、どんどん流されて、上に上に行ってしまう。
あっという間に海上に顔を出していた。すると、金平糖をまぶしたような夜空に、満月が光り輝いている。の海の中とは比べものにならない輝きだ。
それは人魚にも降り注いだ。みるみるうちに、粉々になってしまい、海水にサラサラと溶けた。天の川のようにキラキラとした光で海底に沈んだ。やがて、満月のときだけ照らされるようになった。
―――いまもなお、海底で光り輝き続けている。