夜舞しずく
テーマ「シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムの休日」で、書いてくださった小説をまとめます。
25歳以下のnoter6人がPickする”共感”をコンセプトとしたマガジン。9月・10月のテーマは「芸術」!毎月のテーマに沿って共感したものをマガジンに追加していきます。
理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
体験談を通して、伝えたいことをエッセイにする。それが #私の脳内を文字にする です。このハッシュタグで投稿してもらえば、「いいな」と思ったものをわたしのnoteで紹介します。
2000字までの小説を載せています。一駅程度で読めるものをイメージ。不定期更新。
「文章を書くと自分が消耗する」と、言うひとがいる。本当にそうなのだろうか。ひとの書き方に文句を言いたくはない。ただ、「それってめっちゃしんどくないですか?」「続けられますか?」「そんなことをしてまで文章、書きたいの?」とは思っている。 求められるからと自分の魂を削ってまで、文章にしなくて良い。だって、ネットに出してるから。一生残るもの。タトゥーより残るわ。 ネットは怖いよ。誰が見ているか分からなくて、誰が保存しているか分からなくて、だけど、それが良い風に作用することもある
異常気象のせいで、外出するものはいなくなった。生まれたときから誰にも会わず、家の中で暮らして来たのだ。 「外に出ると、死んでしまうわよ」 母に言われたことを忠実に守っている。家の中にいても雨が降り、擬似太陽の光が降り注ぎ、季節の作物が育つ。 すべてはAIとロボットがやってくれるから、俺は何もしていない。友人も仕事も、全ての生活がオンラインで完結している。 そんなある日、友人Aが家に行くと言ってきた。それっきり、チャットは返ってこない。非常に心配で、喉元を何も通らない。
いまのわたしは、私になりたい。ずっと夢を叶えるのが怖かった。文学賞に出して、一次選考にも通らなかった高校生の頃。それから、自分だけの小説を書き続けている。25歳になった。もう25歳になってしまったんだ。 綿矢りさになりたかったな。高校1年生の頃、本屋さんに並んでいた『蹴りたい背中』の冒頭を見た。こんな作品を書きたいと切に願った。この世の中に希望を見いだせた。当時のわたしと同い年ぐらいなのに惹きつけられる文章を書く、天才が存在するんだと。わたしも、書けるようになりたいと。
毎日のように、深夜に目が覚める人魚がいた。辺りは暗く、さかな一匹も起きていない。落ち込んだ様子でため息をついている。 泡となり、しばらくフワフワと浮かんでは、すぐに割れた。それを目で追ったあと、海藻のあいだをスイスイとかきわけるように泳ぎだしている。 岩場に着くと、透明なブルーにまばゆい光が差し込んできた。 「みんなには怒られるけど、これを見ないと眠れないのよね」 視線の先には、溶けているかのような満月があった。 波が揺れるごとに、キラキラした柔らかい灯りも反射して
窓に雨音が当たる音が目覚まし代わりになった。針のように痛く、それでも、私自身にはぶつからない距離で起っている。こんな憂鬱な季節はいつまでつづくのかな。 そう思っていると玄関のチャイムが鳴る音がした。夜な夜な、通販で頼んでいたことを思い出して、さっきまでの鬱々とした気持ちが吹き飛んだ。 布団を蹴飛ばしてスキップまでしちゃって、インターホンに応答する。 「お届けものでーす」 いつぶりだろう。この声にわくわくしているのは。”大人”と呼ばれる年齢になってから走ることすらなかっ
昔、昔、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんとおばあさんは、ブロッコリーを育てていました。 おばあさんが畑の端に、他より二倍も大きいブロッコリーを見つけました。 「おじいさん、これ見てくださいな」 すぐさま、微笑ましく思ったのか、手招きをしておじいさんに教えます。まるで二人とも孫を囲むかのように、しばらく座り込んでいました。 いっそう愛情を込めて育てるようになりました。どんどん成長します。おばあさんの身長を超え、おじいさんとおばあさんが住んでい
※一部、残虐な表現があります。心臓の弱い方、血にトラウマのある方、などはご注意ください。何があっても作者は一切、責任を負いません。 麻衣のスピーチも終わって、プログラムはどんどん進んでいく。この日をどれだけ心待ちにしていたか分からない。やっぱりゲストハウスにしてよかった。窓の外には大きな温水プールが広がっている。まるで豪邸に住んでいるかような気分でテンションも上がってきた。 今日の主役は私なんだ。 こんなに良い日はないと思う。夢だったジューン・プライドの花嫁になれた。小鳥
「あ、個性が消えたな」と、思うときがある。 いつも文章を読みながら、このひとはどんなひとなのか想像をふくらませている。それがある時、パタッと消えてしまうのだ。好きな文章を読んでいると、影響されてしまうのはだれにでもあること。でも、自分が消えてしまうぐらい"ウケている文章をそのまま真似する"ものは読みたくない。 "祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり" 平家物語にそんな一文がある。 わたしはこれをずっと、「死」のことを書いていると解釈している。ほんとうの意味なんて知らない。
目の前のマンションが燃えている。 ごおおと大きな木も揺れてしまうほどの風の強さで、せっかくの美容院帰りの髪が一瞬にして崩れた。消防士がホースで水を撒いても撒いても燃え広がる炎。 これも運の悪さが積み重なってしまっているのか。黒煙がもくもく立ち上って、入道雲まで煤色に染まってしまっている。あんなに節約した努力が水の泡になる姿を見て、ただひたすらに立ち尽くしてしまっていた。そんな時、だれかが私の下へものすごい形相で駆け寄って来た。 「大丈夫?!ねぇ、大丈夫ってば!わたしは急い
よもぎさんのnoteを見て、「いきものがかり好きの私もしなくてどうする!」と、使命感に駆られたので作りました。いきものがかりについてはもっともーーーっと語りたいことがありますが、水野さんが結婚してからは考えるのもつらいです。でも、好きな曲ばかりあるのでプレイリストを作ることにしました。 今回の対象はインディーズ時代は置いといて、デビュー1stシングル『SAKURA』〜最新シングル『アイデンティティ』まで137曲となっております。※これは一ファンが勝手に作ったものなので、ご了
化粧水がふたつ同時になくなった。 ひとつがカランコロン、と音を立てて床に転がってしまった。「まるで私みたいだ。」わたしはポンっと押されると変に自信をつけて流されてしまう。それは根底の自信がないから。ぐるぐる巡る思考。 結局、すべて"愛されたい"に戻ってくる。 私は時間だけはたっぷりあって、お金がない。仕事がない。社会のレールから外れてしまって、ベッドの上でぼーっと天井をみつづける日々。かなり肩身がせまい。それに私は望んでこうなっているわけじゃなくて、体調が悪すぎてなに
いつもエレクトーンの先生はゴディバをくれた。 「甘いもの苦手やからあげるわ。」 よく貰うのに嫌いらしい。喜んで食べていたら毎回くれるようになった。"甘いものが嫌い"というのは嘘かもしれないけれど、そんな優しさが大好きだった。 でも、私はその先生になるまでエレクトーンが、音楽が、大嫌いだった。 "女の子は音楽をできた方が良い"という、親の自己本位な理由から始めて、2歳から17歳まで続けた。私の意志など完全無視で。どんなに辞めたいと懇願しても「どんだけお金かかってると思っ
梅田のビルから女子高生が飛び降り自殺をしたらしい。理由はジャニーズグループNEWSのライブチケットが落選したから。 私は思った。 「そんな理由で?」 でも、これは違う。だって、私がいじめで「死にたい」と、言ったときも同じような反応をされたから。学生時代の人間関係ごときで死ぬのはおかしいと力説された。人生の10分の1にも満たないのだから、と。しかし、私にとっては学校が全てだった。そんな綺麗事ばかり並べられても「私を理解してくれない人」としか認識できなかった。そう、何でもそ
この間、城崎温泉へ行ってきました。 そして、早速私…… 特急乗り過ごしたァァァァァァァァァァ! 目の前をすごいスピードで去って行く電車に、スーツケースをゴロゴロ転がして全力疾走。「待って!」さえ、特急のゴゴゴゴゴ音で見事に掻き消されて虚しくなった。 誰かと目が合った。それは恋の始まりでも何でもなく、特急内に居る“行きの間にどこに行くか一緒に話し合うはずの友達”だった。20歳過ぎてから体力が激しく低下している私は秒で息切れした。駅員さんに止められた。脳がしんしんと凍りそう。
「今までありがとう。」 いつも通りの笑顔でいる。ただ違うのは大きな黒いリュック。あたしがあげたいつものカバンじゃなくて、黒のリュック。さっきまで和やかだった空気が一気に凍り付いた。今日の晩飯はローストビーフなのに。この2人分のローストビーフはどうすればいいいの? 「どういうこと?」 本当はここで怒鳴って問い詰めたかったが、こうも当たり前のように言われると言い返すことなんて、できなかった。 「えっと、だから結婚することにした。」 この狭いワンルームが余計狭く感じた。 「誰と?」
私はいつもここで静かに待っている。 ここは空っ風がよく吹く。 私の定位置。 私はいつも”にばんめ”だ。 あの子はいつもフリフリやリボンのついている可愛い服を着させてもらっている。羨ましい。私はお下がり。でもそんなの着てやらない。私にだってプライドがあるの。 1番はあの子であの人はいつも選んでくれない。だが、それは決して無視されてるわけではない。眼中にも入れてないのだ。悲しいなんて思っていない。 ただ楽しい会話が目の前で繰り広げられるのを傍観することしかできない。「あ