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夜舞しずく
2020年5月6日 21:26
毎日のように、深夜に目が覚める人魚がいた。辺りは暗く、さかな一匹も起きていない。落ち込んだ様子でため息をついている。泡となり、しばらくフワフワと浮かんでは、すぐに割れた。それを目で追ったあと、海藻のあいだをスイスイとかきわけるように泳ぎだしている。岩場に着くと、透明なブルーにまばゆい光が差し込んできた。「みんなには怒られるけど、これを見ないと眠れないのよね」視線の先には、溶けている
2019年8月27日 17:14
目の前のマンションが燃えている。ごおおと大きな木も揺れてしまうほどの風の強さで、せっかくの美容院帰りの髪が一瞬にして崩れた。消防士がホースで水を撒いても撒いても燃え広がる炎。これも運の悪さが積み重なってしまっているのか。黒煙がもくもく立ち上って、入道雲まで煤色に染まってしまっている。あんなに節約した努力が水の泡になる姿を見て、ただひたすらに立ち尽くしてしまっていた。そんな時、だれかが私の下へ