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ケア日記 モレッティー5月7日
GWがはじまってもおわっても母との暮らしは変わり映えなし 無事こそ一番有難いとおもっても母は退屈このうえないらしい 近くに鳥が巣をつくって毎日鳴いているのがただウレシイ娘のわたしはよほどおめでたいのかわかりません
すっかり元気になったように見える母の最近の口癖は「わたしが早くいなくなってあなたひとりで好きなように暮らしなさい!」です はじめて聞いたときはギョッとして刺さりましたが、口癖となると慣れるものです 「早くひとりで自由にさせてあげたいわ」の台詞もよく登場します
だんだんエスカレートしてくると「死に支度しなくちゃ どうすればいいか教えてちょうだい」と迫ってきます さすがに答えに窮します もし自分が母の年になったらなにを考えるだろうかと想像してみても役に立ちそうにありません 自分の将来となると想像力はいたって貧困です
そうはいっても母の口に蓋することなどできません 「もう何度聞いたかしら?」といってみても暖簾に腕押し豆腐に釘口癖をもみ消し、隠蔽し、無視することはできない相談です 「このごろいいコトバを見つけたわ」といわんばかりに得々として飽きることなくシャワーのように浴びせてくるのですから。。(笑)
なんでもいいから気分転換しようと、近所のジュピターで見つけたモレッティの缶ビールとシンハ―ノンアルを買ってきました わたしはタイのシンハ―が好きですが、母の趣味に合いそうなのはたぶんモレッティでした 濃いグリーンのジャケットを着た人物のラベルがイタリアぽくてなかなかいいです モレッティはワイン会社とのこと、輸入ワインのラベルは洒落たのが多くて好きです あとで知りましたがモレッティビールはノンアルもあるそうです 回し者みたいにいろいろ褒めてますけれど、回し者ではありませんw
可愛い缶を買って帰ったら、母は面白そうに眺めて口をつけ、「コレ美味しいじゃない?缶の絵もいいじゃない?」と案の定モレッティ推しでした まあよかった ついでに通販で瓶を注文しときました GWのプレゼントです🎁 まあるい時間の内側を生きて最新のの複雑でややこしいものを受け入れるメンドウから逃れるのもわかりますが、新しい5月の緑風が鳥たちの声と一緒に昭和レトロな家のなかに吹き込むのもいいものです
月が替わるとわたしはカレルチャペックの園芸本を読むことにしています この本は一年12か月の月ごとに章が替わる有名なエッセイ集です 翻訳のタイトルは中公文庫では「園芸家12か月」、平凡社では「園芸家の一年」です
わたしは暮れの大掃除を12分割し、月ごとにちょっとした大掃除をして一年の疲れがどっと押し寄せる年の瀬の体力をキープするのですが、チャペック園芸本のほうは楽しい本を読みおわるのはあまりにもったいないので12分割して小出しに読んでいます 古い家の掃除とちがってこちらはエゴイズム剥き出し、自分ひとりのため月に一度すべてを忘れてひとり時間をもっています
「5月のチャペックを読まなくちゃ 月に一度だものこれだけはだれにも邪魔されないひとり時間がほしいのよ」とばかりいそいそと5月の章をめくっていると、カンパニュラ・モレッティアーナという名の花をめぐるチャペックらしい楽しい話がこれでもかと繰り広げられていました どこを読んでもこれぞチャペック 5月の雨がそこいらじゅうの地面と空気をあたたかい水滴で湿らすようなユーモアが初夏の光のようにあふれています♪
ジャーナリストであるだけでなく、童話作家、芝居や映画のシナリオ書き、多才極まりないチャペックのエッセイはコメディ風のショートフィルムをみる面白さがありまして5月の章も大満足 チャペックのユーモラスなチェコ愛はずっと追いかけていくと、中欧の歴史を感じさせる辛辣ささえどこかにもっていてとてもとてもチェコ的です
なんだかわからないままモレッティつながりでウレシクなりました 小難しげな哲学が好きだといいながらだいたいいつも偶然のなりゆきで生きていると実感します
「ワタシ、やっぱりチャペックと気が合うのだわ いつ読んでもチャペックは裏切らないもの」
こんどはノンアルを頼んでみようかしら 鳥の声を聞きながらモレッティビールを楽しみに腕まくりしてコカブをぬか漬けにしていれば、母はそんな変な口癖いったかしら?と涼しい顔をして安心して暮らすでしょうか? 世の中はコロナで毎日大変だというのに母といえば元気になればなったで何をいいだすやらハラハラドキドキ
気にしないで流せばいいといわれることがありますが、残念なことにワンオペというのはそう簡単にいかないのが実情なんですね いまのわたしにはコロナより果てしなく繰り返される母の口癖の方がこたえます
たしかに母を心配しないひとり時間をもっとゆうゆうと過ごして、いつも駆け足で読むチャペックだって時間を気にせずゆっくり味わいながら読みたいとおもいますが、いまのところは一緒にモレッティビールを楽しむ時間が幸せなのかもしれません
ここまで読んでいただきありがとうございました☆
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