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【実話】ど田舎の地元が好きで嫌い〜長野脱出編③〜
↑前回までの続き
台所に腰掛ける。
台所の電気が一つついているだけで、奥のリビングやテレビはついていない。
寝巻きの母親はすっぴん。
よく見るとシワも増えたな。母親はいつまでも母親だと思ったけど、自分と一緒で歳をとる。当たり前だけど。
そんな事を思いながら沈黙を貫いていると母親が口を開けた。
『それで。話は?』
僕は覚悟を決め、心のうちを全部話そうとした。上京したい事、病気の事を未だ整理できない事、それともう一つ、上京を辞めようとしている事。
ただ、目の前のサランラップを外しておかずに手をつけながら。
お腹が空いていたのもあるが、単純に目を見る事がなんだかできなかったから。
僕が話をし始めると母親はときどき驚いたような反応を見せながら真剣に聞いてくれた。
僕が今までに地元を離れてどこかへ住んでみたい。こんなものを見てみたい。と、母親に話すことは無かったので新鮮で楽しいんだろうなと僕は思った。
そんな表情の母親をみていた僕は少し気に迷いが出た。
そして、、
自分の今考えている最後の想いを伝える事ができなかった。
そう。今まで話した上京の話をやめようとしている話だ。
母親は随分喜んでいる。本人も地元から出た事がなく、いつか自分の子供が巣立って行くのを楽しみにしていたらしい。目的は自分も遊びにいけるからだと。笑
僕としては、この時点で例のはなしを早々と伝えていればよかったものの、まあいいか。と思ってしまっていた。
これからますます言い出しづらくなるというのに。
④へ続く